プログレスレポートは20年の初版以降、アクティブ投信の手数料水準やESG投信の情報開示、仕組債の営業慣行などの課題を取り上げ、毎年業界内で注目を集めてきました。特に仕組債については、兄弟格である「FDレポート」とあわせて組成、販売両面の問題に厳しく切り込み、事業者側で販売停止の動きが相次ぐなどインパクトを広げました。
これまで、プログレスレポートは総合政策局内の資産運用高度化室が中心となって作成してきましたが、昨年の組織改編で、企画市場局内に資産運用改革室が新設されました。総政局の資産運用高度化室は形式的には存続しているものの、専属の人員は配置されていません。空っぽのハコだけが残っている状態となり、「事実上の取り潰し」(関係者)という見方もあります。
業界内では、新しい資産運用改革室がレポート作成の役割を引き継ぐのかが関心を集めていました。が、金融庁幹部によれば、今年はどの部署においてもプログレスレポートを作成、公表する予定がないということです。
今年1月にはNISA制度拡充が実現し、4月には金融経済教育推進機構が正式に発足。夏以降も各種の新プリンシプルの策定などイベントが目白押しで、資産運用業界にかつてないほど注目、関心が集まっています。なぜこのタイミングで、金融庁はあえてレポート休止の判断を下したのでしょうか。
休止の要因として役所内の人材難を指摘する声もあります。が、ここでは人的リソースの問題だけでなく、プロダクトガバナンスやプリンシプルに関する庁内の論調変化を含め、いくつかの角度から「資産運用業高度化プログレスレポート2024」の不在について考えてみます。