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粉飾予兆検知のためのアプローチ~実粉飾データを利用したモデリングと実務展開~
第1回 取り組みの経緯と概要

松浦 元
松浦 元
株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション 取締役
井實 康幸
井實 康幸
株式会社りそな銀行 リスク統括部 金融テクノロジーグループ
アドバイザー シニア・データサイエンティスト
2023.11.22
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粉飾予兆検知のためのアプローチ~実粉飾データを利用したモデリングと実務展開~<br />第1回 取り組みの経緯と概要

1.銀行取引における粉飾決算問題

株式が上場されていない中小企業に対して行われる銀行融資取引においては、粉飾決算への対応というのは古くて新しい課題である。弊社が非上場企業に対するクレジットスコアリングモデル(以下モデルと称する)の構築を1990年代後半に試行し始めたとき、中小企業は必ず粉飾しているので倒産やデフォルトに関わる法則性というのは見出しづらいのではないか、という疑念を多くの識者から頂いた。

その後、利用可能なデータが増えるに従って中小企業でも一定の精度を持つモデルを構築することができることが確認され、バーゼルⅡの施行に伴う内部格付手法の実装において統計的なモデルをエンジンとして制度を構築するプラクティスが一般化した。ただし、上場企業と非上場企業のベストプラクティスのモデルを比較すると、非上場企業のモデルの精度は上場企業のそれと比較して常に一定程度劣後しており、マクロ的観点から見て粉飾を含む会計の適切性の水準に由来するノイズが非上場企業には存在していることが示唆された。

粉飾という現象を理解するためには融資を受ける中小企業の立場に立って考えると整理が容易だ。典型的な粉飾行為は以下のような過程を辿ると考えられる。

1.銀行取引における粉飾決算問題

株式が上場されていない中小企業に対して行われる銀行融資取引においては、粉飾決算への対応というのは古くて新しい課題である。弊社が非上場企業に対するクレジットスコアリングモデル(以下モデルと称する)の構築を1990年代後半に試行し始めたとき、中小企業は必ず粉飾しているので倒産やデフォルトに関わる法則性というのは見出しづらいのではないか、という疑念を多くの識者から頂いた。

その後、利用可能なデータが増えるに従って中小企業でも一定の精度を持つモデルを構築することができることが確認され、バーゼルⅡの施行に伴う内部格付手法の実装において統計的なモデルをエンジンとして制度を構築するプラクティスが一般化した。ただし、上場企業と非上場企業のベストプラクティスのモデルを比較すると、非上場企業のモデルの精度は上場企業のそれと比較して常に一定程度劣後しており、マクロ的観点から見て粉飾を含む会計の適切性の水準に由来するノイズが非上場企業には存在していることが示唆された。

粉飾という現象を理解するためには融資を受ける中小企業の立場に立って考えると整理が容易だ。典型的な粉飾行為は以下のような過程を辿ると考えられる。

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著者情報

松浦 元
まつうら はじめ
株式会社クレジット・プライシング・コーポレーション 取締役
2001年㈱クレジット・プライシング・コーポレーション設立と共に(株)新生銀行より出向、2002年入社と共に取締役就任。 一貫して銀行、総合商社、リース会社の信用リスク管理の高度化の支援を実施し、多くの法人/個人、国内/海外向けのクレジットスコアリングモデルの構築に従事。また航空機、船舶といったフィジカルアセット向けスペシャリティファイナンスのリスク管理手法の構築についても複数の実績を有する。 1991年関西学院大学経済学部卒業、2006年一橋大学国際企業戦略科金融戦略コース修了。
Mail : hajime_matsuura@credit-pricing.com
Hajime Matsuuraで、FB/Eight/Linkedinアカウントあり
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井實 康幸
いじつ やすゆき
株式会社りそな銀行 リスク統括部 金融テクノロジーグループ
アドバイザー シニア・データサイエンティスト
2007年法政大学工学研究科博士前期課程修了(システム工学専攻)、同年株式会社りそな銀行入社。2009年から融資企画部にてバーゼルⅡ(信用リスク管理)業務に従事。2016年首都大学東京(現東京都立大学)社会科学研究科博士前期課程修了(経営学専攻)。同年からリスク統括部にてリスク管理業務に従事。粉飾検知モデルのほか、オンラインレンディングの審査モデルなどの信用リスク評価モデル開発業務や不正検知モデル開発業務を担当。
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