finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

内閣府令改正で証券会社は投資助言業を兼ねやすく 各社はアドバイザリービジネス拡大の流れに乗るか?

2023.08.10
会員限定
内閣府令改正で証券会社は投資助言業を兼ねやすく 各社はアドバイザリービジネス拡大の流れに乗るか?

政府は8月1日に内閣府令を改正し、証券会社が投資助言業に参入する際のハードルを下げる規制緩和に踏み切りました。今回の改正は、既存の販売手数料を廃して預かり資産残高に応じた料金を受け取る「残高連動フィー」の法的位置づけをめぐる論争が発端です。規制緩和は証券会社のアドバイザリービジネスの在り方をどのように変えるのか、議論の経緯を踏まえて分析します。   (金融ジャーナリスト 金井誠)

助言業の兼業は証券会社の3分の1強

まずは金融商品取引法上の基本的な分類を確認しましょう。第一種金融商品取引業として金融庁に登録している証券会社は、顧客にアドバイスを提供して対価を受け取ったり、対価を受け取る契約を結んだりする場合には別途、投資助言業の登録を行う必要があります。

ちなみに第一種金融商品取引業者306社のうち、投資助言・代理業を兼業しているのは89社。全体の3分の1強程度です。

専業を含めた投資助言・代理業全体の数は996社にのぼり、第一種金商業者による兼業はそのうち1割以下にとどまります(いずれも金融庁公表ベース、6月30日時点)。

このように第一種金商業と投資助言業の兼業は、全体としてみればマイノリティですが、5大証券を含む大規模な証券会社は、実際に投資助言業に登録しているケースも珍しくありません。

ただ、形式的には投資助言業を兼業している場合でも、実際にアドバイスを有償で提供する際には行政上の手続き負担が生じ、ビジネス拡大の制約となってきました。

そもそも投資助言業という枠組みは、基本的に中小規模の事業者を念頭に設計されています。たとえば投資助言業に登録すると、実際に投資の分析や判断を担うスタッフ1人ひとりの氏名を記載した申請書を金融庁に届け出る必要があります。大勢の証券外務員を抱える証券会社にとって、こうした手続きは非常に煩雑です。

近年、既存の販売手数料を廃止して、代わりに預かり資産残高の規模に応じた料金を課す「残高連動フィー」を導入する機運が高まったことを背景に、証券会社がアドバイザリービジネスに踏み出せるよう後押しする規制緩和を求める声が上がっていました。

今回の府令改正は金融審議会傘下の市場制度ワーキンググループが昨年6月に取りまとめた報告書の提言をもとに、投資助言業を兼業する際の手続き負担や業務上の制約を軽減する内容となっています。

 

登録申請、契約、記録の各段階で負担軽減

それでは今回の府令改正によって、投資助言業の在り方が具体的にどのように変わるのかを見ていきましょう

制度改正の主なポイントは以下の4点です。

①登録手続き時に担当者の氏名の記載を省略できる

②契約締結前交付書面などでも担当者の氏名の記載を省略できる

③投資顧問契約に基づくアドバイスの記録を録音データで代用できる

④投資助言業務を兼業しながら貸付が行える 

従来、投資助言業者は投資の分析や判断を行う担当者の氏名を、登録手続きの際の申請書や、顧客に渡す契約締結前交付書類に記載する必要がありました。特に登録申請書については、メンバーに変更があるたびに届け出ることが義務づけられていました。今回の府令改正によって、証券会社などが投資助言業を兼業する場合、条件つきで氏名の記載が省略できるようになります(上記①②)。

また、投資顧問契約を結んでアドバイスを提供する場合、基本的にその内容を書面で記録することが義務付けられていますが、これを録音データで代用できるようになります。その代わりに事業者は、担当者氏名や日付ごとに録音データを検索できるシステムを整備する必要があります(③)。

さらに、従来は禁止されていた兼業事業者による貸付も条件つきで解禁されます(④)。ただし、グループ内の銀行と兼職している場合には、貸付の媒介や取次、代理を制限する金商法の別ルールに抵触する可能性があるため引き続き注意が必要です。

助言業の兼業は証券会社の3分の1強

まずは金融商品取引法上の基本的な分類を確認しましょう。第一種金融商品取引業として金融庁に登録している証券会社は、顧客にアドバイスを提供して対価を受け取ったり、対価を受け取る契約を結んだりする場合には別途、投資助言業の登録を行う必要があります。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
次のページ 残高フィービジネスは当局のもくろみほど盛り上がらず
1 2

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

【連載】こたえてください森脇さん
⑩役席者には収益目標、現場には残高目標。両方を達成するには?

森脇 ゆき

【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉

文月つむぎ

滋賀銀行で人気化の「ゴールド」と「インド株」、上昇勢いに乗る「順張り」と雌伏に賭ける「逆張り」の結果は?

finasee Pro 編集部

片山さつき新大臣は「資産運用立国」基本線を継承へ!一方、岸田元首相が運用業界につきつけた「注文」とは…

川辺 和将

⑩自社株評価の考え方③(税法)【動画つき】

木下 勇人

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉
片山さつき新大臣は「資産運用立国」基本線を継承へ!一方、岸田元首相が運用業界につきつけた「注文」とは…
滋賀銀行で人気化の「ゴールド」と「インド株」、上昇勢いに乗る「順張り」と雌伏に賭ける「逆張り」の結果は?
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
常陽銀行の売れ筋で大きく順位を上げるも、10月に過去最大「250ドル安」のゴールド。上昇相場の転機になるか?
【連載】こたえてください森脇さん
⑨顧客本位の実践より、自身の営業成績を優先している方が評価されていると感じる
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
中国銀行で売れ筋トップ10にランクインした「パワテク」、今年の新設ながら抜群の運用成績で脚光
「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
片山さつき新大臣は「資産運用立国」基本線を継承へ!一方、岸田元首相が運用業界につきつけた「注文」とは…
【連載】こたえてください森脇さん
⑨顧客本位の実践より、自身の営業成績を優先している方が評価されていると感じる
三菱UFJ銀行の売れ筋トップに限定追加型「CBファンド」、圧倒的なパフォーマンスから「純金ファンド」がランクイン
新規設定金額は大幅回復、「ディープバリュー」「国内コンテンツ」「欧州株」など投資対象資産が拡散 =25年9月新規設定ファンド
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
三井住友銀行の売れ筋で「S&P500」を抜いて「225」浮上、新ファンド「ディープバリュー戦略」は破壊力抜群
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
資産運用ビジネスの本気度が問われる時代へ、変わる監督行政と業界
7月に発足した金融庁「資産運用課」の課題は  永山玲奈課長に聞く
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
【地域金融力の現在地-前編】横浜銀行、ひろぎんの目指す地域金融力の形とは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑧ゴールベースアプローチを実践するための具体的な会話例は?
【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ
「動画を上げるぞ」「マスコミに流すぞ」に毅然と対応できる?――日証協の新カスハラ対策マニュアルの中身とは
片山さつき新大臣は「資産運用立国」基本線を継承へ!一方、岸田元首相が運用業界につきつけた「注文」とは…
「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」
「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら