――前回は、人的資本経営を進める上での日本企業の課題が指摘されましたが、海外の企業では人的資本はどのように扱われているのでしょうか。

阿久津 米国では1990年代から戦略的人的資源管理(SHRM:Strategic human resource management)という考え方が企業の間に拡がり、人的資本の概念と合わさって発展してきました。日本の人的資本経営とは出発点が異なりますが、人的資本と経営戦略を結びつけて考えるという点に関しては日本よりも進んでいると思います。

白井 戦略から人へ落とし込む発想がすでに前提として浸透しているため、開示に関してもIRやガバナンス的な観点で人的資本を重視する動きはありますが、あえて「人的資本経営」という視点を大きく掲げている感覚はありません。しかし、リスキルとアップスキルについては日本よりもより切迫感のあるテーマとしてクローズアップされています。

なぜなら、海外においてもデジタル領域を中心に圧倒的に人材が足りない状態が続いていて、大学の学部を増やしても、供給が全く追いついていません。その結果、インターネット上のプラットフォームを通じて単発で仕事を請け負うギグワーカーを使うとか、コンサルティング会社を採用するなど、  リソース確保の方法がフレキシブルになっています。つまり職種での採用というより「このタスクをこなすにはこのスキルが必要」といったように細分化してリソース調達計画を考える方向へと変わってきています。

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