実花に残った後悔

夏希が帰ってから1週間が経った。遅めの朝食を作っているとき、実花はリビングに目を向けた。リビングでは琢也がテレビをつけてスマホをいじっていた。懐かしい光景ではあったが、実花は違和感を覚えた。

朝食のスクランブルエッグを食べながら、実花は琢也に話しかけた。

「ねえ、今日はゴルフ行かないの?」

休日は朝から打ちっぱなしに行っていた。さらに平日だって仕事終わりに打ちっぱなしに行っていたのが、ここ1週間なくなっていた。

琢也はお茶を飲んでから答えた。

「もう行かないよ。ゴルフはもうしない」

「え?」

あっさりとした琢也の言葉に実花は目を丸くした。

「……やめた? そんな急に?」

「実花が言ってただろ。あれだけやったのにうまくならないなら無駄だって。俺もその通りだと思った。無駄なことに時間とお金をかけすぎたって反省したんだ」

「……いや、別にやめろって言ってたわけじゃ」

「いいんだ。変にのめり込む前にやめられて良かったよ」

琢也の言葉には嫌味のようなものはなかった。

食事を終えると、琢也は再びソファに戻り、スマホを触りだした。食後に実花は家の掃除をした。玄関前の廊下でワイパーをかけていると、玄関の横に置かれたゴルフバッグが目に入った。そのままリビングをちらりと見ると、琢也はスマホの画面を見ながら寝転んでいた。

少し前までは休日になると嬉しそうに打ちっぱなしに行っていたのに、すっかり元の生活に戻ってしまっていた。

「もっと別の言い方があったでしょ……」

実花は自分自身にそうつぶやいて、深いため息をついた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。