娘の帰省日にもゴルフへ

琢也の言葉に実花はすぐには言い返せなかった。確かに、休日ずっと家でだらだらしている琢也に少し息が詰まっていたのは事実だった。

「…だからって何でもゴルフを優先していいって意味じゃないでしょ」

「とにかくゴルフには行く。夏希には俺から話しておくから」

そう言うと琢也はリビングを出ていってしまった。

実花は何も言えず、その背中を見送った。外に出るきっかけくらいになればいいと思って趣味を勧めたのに、いつの間にか琢也の生活はゴルフを中心に回り始めている。自分が望んでいたのはこんなことではないと、実花は釈然としない気持ちを抱えた。

 

   ◇

 

それから琢也との間にはぎこちない空気が流れ、夏希が帰ってくる当日を迎えた。

琢也は仕事のときよりも早く起きると、テキパキとウェアに着替えていた。琢也が起きたのと同時に目を覚ました実花は、とりあえず玄関まで見送りに向かった。

「じゃあ、行ってくる」

「……夜ご飯までにはちゃんと帰ってきてよ」

「ああ。分かってるよ」

琢也はゴルフバッグを抱えて、軽い足取りで家を出ていった。ここ最近では見たこともないほどに嬉しそうな笑顔をしていた。

それから実花は予定通りの時間に夏希を駅まで迎えに行き、それから2人で買い物や食事を楽しんだ。そして夕方に家に帰り、夕食の準備を始めた。夏希の好物だったハンバーグがある程度完成したところで玄関が開く音がして、リビングに琢也が入ってきた。

「ただいま」

今朝とは打って変わって暗い声だった。琢也はそのままソファに深く腰を下ろし、疲れたように大きく息を吐き出した。てっきり嬉しそうにゴルフの話をしてくるものだと思っていた。