finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

【ブルームバーグ寄稿】日本のAI規制関連が急展開 金融セクターにとってはまたとない機会に

ノーマン・L・トゥエイボーム
ノーマン・L・トゥエイボーム
ブルームバーグ 日本統括責任者
2025.06.18
会員限定
【ブルームバーグ寄稿】日本のAI規制関連が急展開 金融セクターにとってはまたとない機会に

生成AIの急速な進化と普及は、個人・企業・社会全体に深い変化をもたらしています。こうした潮流の中で、日本政府はAIに関する法整備を加速させ、金融庁も官民連携の枠組みを構築するなど、政策対応に乗り出しています。ブルームバーグ日本統括責任者ノーマン・トゥエイボーム氏は本寄稿で、日本が生成AIの活用において世界をリードする可能性と、その実現に不可欠な官民の協力体制について論じています。

生成AIが我々の意識に急速に浸透して以来、個人、企業、そして社会全体レベルでこの技術との関わり方において、グローバル規模で大きな変化が起きています。

日本においては、国会が先月28日に、AIの開発を促進し、技術に関連するリスクに対処する新しい法律を制定する法案を可決するなど、政府がAIの利用における健全な環境を構築するための規制の重要性が注目されています。

金融庁も3月に金融業界におけるAIの利用に関するディスカッションペーパーを発表しました。さらに同庁は今月初めに官民のステークホルダーによる研究会を立ち上げ、その初会合が本日開催されました。

個々の企業努力から次の段階へ


規制というと、通常、ガードレールの整備や境界線を連想させるものですが、このたび日本においては、新しい産業の成長を促進する政策設定を意味しているように見えます。そして、特に金融サービスにおいて、日本はこの新興分野で世界のリーダーになりえる重要な局面にあるとみています。

例えば、金融庁のディスカッションペーパーは、政策立案の観点から、重要な方向性を示しています。つまり、AIを取り巻く環境が急速に大きく変化しており、そのスピードに対応するためには、現在の状態、いわゆるAI関連の問題を各企業が独自に対処するのではなく、官民の協力と社会全体の横断的なアプローチに移行する必要性を指摘しています。

AIが非常に迅速に進化しているという事実を改めて認識し、政府と民間企業、そして社会全体が、この新しい技術の健全な開発と応用において、果たすべき役割があるとしています。そして、個々での対応よりも、変化と機会に迅速に対応する能力を官民ともに、そして業界や社会レベルで構築する段階にきているというメッセージだと感じています。
 

実際のところ、AIが5年後にどのような姿になるかは誰にもわかりません。そのため、見通しの立たない将来のシナリオに対して規制を設けることは難しいでしょう。その代わりに、この技術を取り巻く枠組みを構築し、合理的で生産的な結果を導くための能力と知識を作り上げていくことは可能です。
 


近年、日本では様々な業界においてDX化を進めており、従来型の技術からの移行、そしてデータ駆動型の意思決定を業務に採用し始めています。AIはこれらの動きを更に加速できる可能性がありますが、個々の企業努力を超えたレベルで発展させるには、新しい協力体制、そして官民の連携が必要です。

そういったなか、政府による規制と金融庁のディスカッションペーパーは共に、日本が迅速な開発と展開の恩恵を最大限に享受できるための適切な保護措置を備えており、日本のビジネス業界、特に日本の金融業界にとって、生成AIの活用により世界の最先端をリードできる絶好の機会を提示していると思います。

しかし、このような高い目標は、政府や関連省庁と民間の横断的連携と決意なしには実現しません。だからこそ、私たちは新しい規制と金融庁のAIフレームワークに関する重要な官民による議論の開始を支持しています。同時に、こういった一連の動きは、金融セクターにおいて生成AIへの投資は歓迎され、そしてサポートされていることを示しています。
 

生成AIの可能性と課題

金融庁のディスカッションペーパーにでは、潜在的な課題と考えられる対応策が紹介されています。また金融庁が実施した調査によると、9割以上の金融機関がすでに業務効率、対顧客サービス、リスク管理の高度化、市場予測などの分野で従来型AIを活用しているとしています。

一方で、同ペーパーは、生成AIにおいてのユースケースはハルシネーション等のリスクを懸念し躊躇するなか、社内での業務効率化に留まっていると指摘しており、生成AIが持つ可能性が十分に活用されていない可能性を指摘しています。

確かに、AIの大規模な実装の核心には、生成された出力を信頼できるかどうかという基本的な質問があります。これは、金融サービスのような高度に規制された高リスクのセクターでは特に重要です。

実際、技術が急速に進化するにつれて、安全でない結果の可能性も増大しており、そういった課題を十分に認識することは、AIの長期的な活用の成功において重要なポイントとなっています。そしてAIの開発者とユーザーの皆さまは、システムにAIを組み込む際に、慎重なアプローチをとることがこれまで以上に求められています。

こういった点について、同ペーパーでは、対応策として生成AIを駆動する大規模言語モデルの精度を向上させるために設計されたRAGのような技術やプロンプトに工夫を行う、また根拠となる文書に回答を含めることで根拠の裏付けを確認できるように設定する必要性などを挙げています。

金融業界に特化したタクソノミーの必要性

ここでぜひご紹介させていただきたいのですが、ブルームバーグはこの分野において二つの最新の学術論文を直近に発表しています。これらの論文によると、RAGには未だ改善の余地があるという点です。そして既存のガードレールシステムと汎用AIコンテンツリスクの分類法(タクソノミー)が、金融サービスセクターの実世界の生成AIシステムの独自のニーズに対応しきてれておらず、金融業界に特化したタクソノミーの必要性を指摘しています。
 

いずれにせよ、今回の新しい規制と金融庁のペーパーは、今後、検証が必要となる論点を示しています。こういった議論を経る中で、日本が金融セクターでのAI開発、そして活用において、世界的にリーダーシップをとれる機会であることを明確にしています。そして、潜在的な課題に慎重に対処していくことで、イノベーションへの競争とリスク管理の両方を達成することができるでしょう。
 

私は、日本の金融業界の同分野での活躍に大きな期待を寄せています。それは、日本の金融業界にとって2つの重要な機会が提示されているからです。

まず第一に、日本の経済成長を支える技術とリソースを開発する先導的な役割を果たす機会、そして更に、新しい技術を安全かつ賢く受け入れる方法についての社会全体の議論に積極的に参加する機会でもあります。

我々は、官民ステークホルダーによる同分野の議論の行方を今後も注視していきます。

生成AIが我々の意識に急速に浸透して以来、個人、企業、そして社会全体レベルでこの技術との関わり方において、グローバル規模で大きな変化が起きています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

おすすめの記事

三井住友銀行の売れ筋で「社債」ファンドがランクイン、投資リスクに慎重になった理由は?

finasee Pro 編集部

【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からは「キャピタル」、「フィデリティ」、「アライアンス・バーンスタイン」の米系3社が盤石の高評価/IFA法人編

finasee Pro 編集部

「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み

川辺 和将

国内株は高値一服で押し目買いの資金流入が拡大、高パフォーマンスはヘルスケア関連株ファンド=25年11月投信概況

finasee Pro 編集部

マン・グループの洞察シリーズ⑬
AIバブルのタイミングを計ることはできないものの備えることはできる

著者情報

ノーマン・L・トゥエイボーム
ノーマン・トゥエイボーム
ブルームバーグ 日本統括責任者
2021 年より日本統括責任者として日本全域の営業推進、サービスの実装、顧客サービスなど営業戦略全体を指揮する。 現職以前は、バイサイド・エンタープライズ営業部門アジア統括責任者を担当し、アジア太平洋地域のバイサイド向け戦略、推進、クライアントサービスに従事する。シンガポールを拠点とし、ブルームバーグのポートフォリオやインデックスビジネスにおいて、地域戦略や事業開発を監督し、アジア太平洋地域 20 カ国以上のメンバーで構成されるチームを統率。同チームでは、アセットオーナー、資産運用会社、グローバルバンク、地方銀行などの金融機関におけるインデックスやポートフォリオ分析のニーズを捉えたソリューションを提供。 ブルームバーグによるバークレイズ、リスク・アナリティクス・アンド・インデックス・ソリューションズ(BRAIS)の買収により、2016 年にブルームバーグ入社。BRAIS では、債券ベンチマークやストラテジーのインデックス、ポートフォリオ分析、リスクとアトリビューションモデル、ポートフォリオ構築ツールなど、市場を代表するプロバイダーとしての指揮を執った。 大学卒業後リーマン・ブラザーズに入社し、広く使われている債券ベンチマークやストラテジーインデックスの発展に従事し、ニューヨーク、東京、香港で勤務した。 ニューヨークのペース大学にて、経済学と統計学を専攻。学士号取得。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み
【運用会社ランキングVol.5】IFA法人からは「キャピタル」、「フィデリティ」、「アライアンス・バーンスタイン」の米系3社が盤石の高評価/IFA法人編
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
三井住友銀行の売れ筋で「社債」ファンドがランクイン、投資リスクに慎重になった理由は?
米国RIAが語るプライベート市場の進化と個人投資家への拡大【米国RIAの真実】──Midland Wealth Managementのエミル・スキ氏とジェイク・ステープルトン氏に聞く
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
野村證券の売れ筋トップ10入りした「野村日本バリュー厳選投資」は国内株ファンドを左右するバロメーター
マン・グループの洞察シリーズ⑬
AIバブルのタイミングを計ることはできないものの備えることはできる
富士通/富士通企業年金基金の企業型確定拠出年金の取り組み-加入者の関心を高めるセミナー、動画配信の工夫に迫る
「遵守か説明か」から「遵守か合併か」に――2026年の地銀政策はどこへ?金融審「地域金融力WG報告書案」を深読み
企業型確定拠出年金の運用商品を見直し、継続投資教育を刷新したヤマト運輸が加入者の反響を得た手応えとは
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
富士通/富士通企業年金基金の企業型確定拠出年金の取り組み-加入者の関心を高めるセミナー、動画配信の工夫に迫る
マン・グループの洞察シリーズ⑬
AIバブルのタイミングを計ることはできないものの備えることはできる
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(4)バランスファンドのモニタリング① ベンチマークの課題とその解決法
「顔の見える関係」づくりに注力、より良い企業型確定拠出年金制度の実現に大和ハウス工業がコミュニケーションを重視する理由
米国RIAが語るプライベート市場の進化と個人投資家への拡大【米国RIAの真実】──Midland Wealth Managementのエミル・スキ氏とジェイク・ステープルトン氏に聞く
野村證券の売れ筋トップ10入りした「野村日本バリュー厳選投資」は国内株ファンドを左右するバロメーター
大和証券の売れ筋で「ピクテ・ゴールド」はトップ堅持、株式アクティブファンドを人気や運用成績で上回るバランスファンドは?
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら