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サステナ投資促進策は終わり?「仕分け」の対象になってしまうのか

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.06.19
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サステナ投資促進策は終わり?「仕分け」の対象になってしまうのか

金融庁で6月10日、行政事業レビューの公開プロセスが開かれ、サステナブルファイナンス推進に関する事業が俎上に載せられました。行政事業レビューは旧民主党政権下に始まった「事業仕分け」の後継的な位置づけで、仕分けの時代に比べると、事業継続に正面から反対する厳しい声はあまり聞かれなくなった――はずですが、今回のレビューでは国際的に広がる反動的な論調を反映するように、一部有識者からサステナ投資促進策に予算を割く意義をラディカルに問う声も上がりました。

「インパクト」「アジアGX」の推進事業がレビュー対象に

今回の行政事業レビューでは、金融庁が取り組むサステナブルファイナンス推進事業の中でも、特に「インパクト・コンソーシアム」と「アジアGXコンソーシアム」に関する予算の妥当性に焦点が当てられました。

インパクト・コンソーシアムは、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指す「インパクト投資」の普及・拡大を目指し、アジアGXコンソーシアムは、アジア地域における脱炭素化に向けたトランジション・ファイナンス等の推進を図るものです。24年度は、当初予算・補正予算・前年度からの繰越等を合わせて190万円でした。

 

レビューではこれらの事業に投じられる公費の使途やその効果の測定方法について、外部有識者とともに点検し、大半の有識者が、持続可能な社会の実現のためにサステナブルファイナンスの環境整備を進める政策的意義そのものについて肯定的に捉えていました。金融庁が掲げる、社会課題解決に金融の力が不可欠であるとの見解に対し、理解を示す声が多く聞かれました。

 

一方で一部出席者からは、推進策への公費投入の妥当性について、鋭い懐疑論が上がりました。ある研究者は、ESG投資がリスク調整後に超過リターンを継続的に得られないという学術的なコンセンサスが存在するとの見解を示し、「公費を投入してまで、損をすることが分かっている、あるいは効果がないと分かっている事業を推進することに正当性はあるのか」「投資家に損をしてでも地球環境のために奉仕せよという方針なのか」と迫りました。

 

これに対し担当官は、「サステナビリティ投資の運用パフォーマンスに関しては、学会や市場関係者の間で、ポジティブ、中立、ネガティブいずれの評価分析も示されており、引き続きさまざまな議論があると認識している」と述べ、特定の学説に依拠して政策判断を行っているわけではないと説明しました。また、「政府の方針」をたびたび引き合いに出しつつ、「社会課題解決と持続可能な成長を実現するためには、金融の力が不可欠である」「持続可能な経済社会の確保は、国民一人ひとりの生活基盤、事業基盤そのもの」との姿勢を強調。研究者と担当官の間では、サステナブル投資のリターンに関する学術的な共通認識の有無について認識の相違があり、その後も議論は平行線をたどりました。

「将来の誤認評価のリスク」指摘も

また、他の委員からは、サステナブル投資のパフォーマンスに関する意見が分かれる中で、ネガティブなエビデンスや慎重な姿勢を示す投資家の考え方も考慮した情報発信のあり方について再検討を求める意見も出されました。さらに、金融庁が公開している有識者会議の報告書において、サステナブル投資が中長期的に収益拡大につながりうると示唆する記述があることに対し、中立的な立場を維持するよう注意喚起する声も上がりました。

 

レビュー終盤に有識者委員から募ったコメントでも、おおむね事業の意義を認めつつも、その具体的な運用や効果測定、そして政策メッセージのあり方に対し改善を求める内容が目立ちました。中には、「事業を推進する意義、根拠に関して、外部の会議(サステナブルファイナンス有識者会議等)に丸投げの印象を受け、金融庁が主体的に責任を持つ意思をうまく伝えられていない。補正予算を取るために、その信ぴょう性に強く疑問を持たれているトリッキーな研究を使い続け、政府の政策方針・スローガンに便乗して、結果的に貴重な国民の資産の運用を非効率的にしたとの誤認評価を将来招くリスクがある」との厳しい指摘も上がりました。

 

今回の点検結果はレビューシートに盛り込まれ、今後、金融庁内のチームでの点検を経て、概算要求に反映される見通しです。

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窪谷 浩

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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