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プラチナNISAの創設案が映す「森信親イズム」の終焉

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.04.21
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プラチナNISAの創設案が映す「森信親イズム」の終焉

NISA制度内に高齢者向けの新枠を創設し、毎月分配型を解禁する「プラチナNISA」案の話題で、業界内はもちきりです。金融庁はこれまで毎月分配型に批判的な姿勢を取ってきたことから、まだ検討段階ながら「今さらどの口が」(IFA幹部)と、早くも事業者側からは戸惑いや憤りの声も聞こえます。一方、金融庁内を長年支配してきた「あの人」の影響力の変化をみる向きも――

またシステム改修か… 落胆の声

岸田文雄前首相が率いる自民党・資産運用立国議連が今週にも正式に提言書をまとめる予定です。関係者によれば、すでに金融庁や業界団体側とも擦り合わせが済んでいる状況です。

 

SNS上では高齢層とみられるアカウントを中心に「使ってみたい」といった前向きな評価が見られる一方、業界内では戸惑いも広がっています。

 

ある地銀関係者は「NISAのシステム改修で大変なコストを支払ったばかり。金融庁はシステム会社を儲けさせようとしているとしか思えない」と不満をこぼします。システム改修の負担については21年以降の重要情報シート導入、24年のNISA拡充もあって事業者側で不満が高まったこともあり、金融庁は近年、投信に関して製販のデータのやりとりを支える「公開販売ネットワーク」について、寡占的状況の是正を働きかけています。が、「公販ネットワーク以外の大半の分野で、コスト高の状況が改善される兆しはない」(中堅助言会社代表)ともささやかれています。

 

また、別の業界関係者は「せっかく製-販の情報連携が進んでいるのだから、成長投資枠の対象に毎月分配型を追加するだけで済むはずだ。それなのに、一度作った枠組みを修正できないとは、役所の悪いところが出ている」と嘆きます。

 

スルガ問題再燃の余波も

プラチナNISA創設案の背後に、森信親元長官による行政運営の理念や手法を踏襲する「モリイズム」の影響力の変化をみる向きもあります。

 

衆院財務金融委員会ではスルガ銀行をめぐる問題が改めて取り上げられ、在任中にスルガを賞賛する発言をしていた森氏に、改めて批判の矛先が向かっています。庁内の事情を知る関係者は、「野党が森氏の参考人招致さえちらつかせている事態もあり、長年、森路線を踏襲してきた金融庁内でも潮目が変わってきた」とみています。

 

森長官は「毎月分配嫌い」で知られ、かつて一世を風靡した通貨選択型に連なる不適切な商品として毎月分配型を目の敵にし、批判的な姿勢を示していました。

 

ただ、金融庁のこれまでの情報発信を読み返すと、毎月分配型そのものの商品性を否定するというより、若年層への営業・販売について、「ニーズとの不一致」という観点から問題視してきました。例えば金融庁が2年前の春に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」では、「プロダクトガバナンスの観点では、商品がその特性に見合った投資家に提供されることも重要である」「分配型投資信託は、資産形成層には不向きな面もあるが、組成時に想定したとおりの商品提供が行われていない可能性がある」と記載しています。

 

筆者の見立てでは、金融庁は今後「毎月分配型の商品性そのものや、ニーズのある高齢層への販売を批判したことはない」「FD原則改定によって顧客年齢層に関する製-販の情報連携が仕組み化されたことで、不適切な営業についてけん制が働くようになった」といったようなロジックで、これまでの行政運営との連続性を強調すると考えられます。一方、高齢者の取り崩しニーズに特化した制度の創設は、伝統金融界にとってメリットが期待されることも事実です。政府からの働きかけで、なし崩し的に進むことも予想されますが、官民が足並みを揃えられるよう、金融庁には丁寧な説明・調整の手腕が求められそうです。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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