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自公大敗に動揺?金融庁幹部は「NISA推進継続」強調も、記者が気になった2つの変化

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.10.31
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自公大敗に動揺?金融庁幹部は「NISA推進継続」強調も、記者が気になった2つの変化

先の衆院選で自公政権が過半数割れとなり、岸田前政権から引き継がれた「資産運用立国」政策の継続性を危ぶむ向きがある中、「NISA推進戦略協議会」が10月29日、都内で会合を開きました。参加した官民の代表らは、NISA推進に向けアフターフォローの強化、金融リテラシー向上など従来の施策を継続する姿勢を確認。ただ、風向きを読み切れない情勢下でバランスを維持する難しさを、言葉の端ににじませる場面もありました。

27年末の政府目標を再確認

NISA推進戦略協議会は、制度拡充に対応する官民連携の組織として23年に設立。今回は今年1月の拡充後としては、初めての会合です。

この日の主な議題は8月上旬の株価急落局面における顧客対応。野村證券、SBI証券、三井住友銀行(発言順)などの各代表が出席し、相場急変時の投信売買の動向や実際の対応内容についてプレゼンしました。SBI証券の担当者は、相場急変時も利用者に極端な混乱はみられなかったと説明したうえで、「引き続き27年末の政府目標であるNISA3400万口座達成に向けて、普及に対して努力・尽力していきたいと思っている」と述べました。

金融庁政策立案総括審議官の堀本善雄氏は、各業界に対し、顧客への対応の体制整備や、利用者のライフプランに応じた適切で安定的な資産形成の重要性を浸透させる取り組みなどを求めました。加えて金融庁側で、各社におけるNISA口座を通じた金融商品の売買状況、顧客からの問い合わせ・苦情などの状況について、必要に応じタイムリーに把握する態勢を整備する考えを説明し、協力を求めました。

しめくくりの挨拶で堀本氏は、「金融庁としては資産運用立国によって、新しく形成され始めた投資の資金、インベストメントチェーンの流れが、なるべく国全体の経済成長、あるいはなるべく多くの家計にその恩恵が行くよう施策を展開していく。これが我々の現時点での非常に重要なプライオリティ」と説明。「そうした観点からもNISAの適切な活用、あるいは金融経済教育の充実に向けてさらなるご協力をお願いしたい」と呼びかけました。

 

「投資大国」が消えた…?

堀本氏を含め今回の会合の参加者が、衆院選の結果や政局に言及する場面はありませんでした。

堀本氏は官邸との調整役を担うキーパーソンとして知られ、バランス感覚には定評があります。政局が混乱している微妙な時期に不用意な言及を控えるのは、当然のことでしょう。しかしそのうえで堀本氏の発言には、気になる点が2つあります。

一つは、石破茂首相が掲げる「投資大国」のスローガンに言及しなかったこと。もう一つは、しめくくりの部分で、成長と分配の好循環という岸田前政権以来の最大の政策目標に「現時点での」と留保をつけたことです。

石破首相は就任後から、岸田前政権の「資産運用立国」政策を引き継ぐ形で「投資大国」実現を打ち出してきました。新政権発足後、イベントや審議会の場で担当大臣や金融庁幹部が発言する際には必ずこの「投資大国」というフレーズを用いるのが定番化していました。それだけに堀本氏がこの日、この言葉を一度も口にしなかったことは異例といえます。

「現時点で」「今のところ」「等」といった逃げ道を確保するような物言い自体は、霞が関の言葉づかいとして全く不自然ではありません。重要なのは、留保の使いどころです。

「成長と分配の好循環」は、岸田前政権から引き継ぐ「資産運用立国」の根幹を成す重要な理念です。そのプライオリティを「非常に重要」としながら「現時点で」と表現上の保険をかけざるをえなかった堀本氏の発言からは、混迷する政局の行方に対する金融庁全体の様子見姿勢も伺えます。

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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