「まだ十分に発達していない分野」に資金を
全国証券大会は、官民で金融関連のイベントを集中開催する「ジャパンウィークス」の一環。加藤大臣、森田会長に加え、日本銀行の植田和男総裁、経団連の十倉雅和会長も登壇しました。
石破首相は「このたびの政権においても、『資産運用立国』の政策を着実に引きつぎ、さらに発展させるとともに、これに加え地方への投資を含め、内外からの投資を引き出す『投資大国』の実現を経済政策の大きな柱の一つとしている」と説明。「資産運用立国により、新しく形成され始めた投資資金の流れが、特定の投資家や企業、分野だけではなく、国全体の経済成長や、家計分野への還元をもたらすように取り組んでいく」と語りました。
「より幅広い層の家計に、長期・安定的な資産形成を実現していただくとともに、企業統治経営の改革を強化して、持続的・構造的な賃上げと投資を促進し、また、社会課題解決に向けた投融資、スタートアップに対する投資といった、まだ十分には発達していない分野への資金供給を促進することを目指す」としました。
あわせて、物価高対策、労働市場改革、物価に負けない賃上げの定着を実現し、賃上げと投資がけん引する成長型経済を目指すと説明。そのうえで、「証券業界におかれては資本市場の仲介者として、成長性のある企業の資金調達をお支えいただくとともに、一般の家計の安定的な資産形成を支える担い手として、このような投資大国の実現に向けて大きな役割を果たしていただきたい」と呼びかけました。
加藤大臣「販売後のフォローもしっかりと」
加藤大臣は、金融担当大臣として初めて公の会合に出席。「石破内閣では、これまで岸田内閣が進めてきた経済政策、これをしっかりと引き継ぎ、デフレからの脱却を確実なものとしていく」と述べました。
「投資大国の実現を経済政策の大きな柱として進めていきたい。この点については昨日、金融担当大臣を申し付けられた際に、総理からも具体的にはっきりと指示を受けたところだ」と説明。新首相との結束をアピールしたうえで、「政府としては、資産運用立国と投資大国の実現に向けて、家計・企業を初めとしたイベントチェーンを構成する各主体をターゲットとした取り組みを、さらに強化をしていく。足元において貯蓄から投資へ移行、これが大きく進んでいるところであり、その動きをさらに大きなものとしていきたい」と語りました。
家計については「デフレから脱却し、適度な物価上昇が見込まれる中で、より幅広い層の家計において、長期安定的な資産運用が行われるよう、NISAの適切な活用や金融経済教育、これらを推進していく」と説明。企業については「株主である機関投資家が行うスチュワードシップ活動などに通じて、企業の統治経営改革を促し、それによって持続的構造的な賃上げ等の人的投資や成長分野への戦略的な投資がなされるよう取り組んでいきたい」と述べました。
加えて、「脱炭素化など社会課題の解決に向けた投融資、あるいはスタートアップに対する投資といった、まだ必ずしも十分に行われていない分野の資金供給を促進していきたいと考えている。企業への資金供給と、投資成果の家計の還元が適切になされるよう、企業と家計を橋渡しをされる資金運用業や年金等のアセットオーナーの機能の強化も図っていく」としました。
そのうえで証券業界に対し、「金融商品を顧客の皆様に提供する立場として、家計の安定的な資産形成に向けて重要な役割を担っていただいているところだが、顧客1人1人のライフプランや資金ニーズをしっかりと踏まえていただき、中長期目線での資産形成を後押しし、商品販売時のみならずアフターフォローもしっかりお願いしたい」と説明。
「そしてなんといっても、顧客の利益の最大化を目指していただきたい。これによって、顧客が信頼と安心のもとで金融サービスを利用できる。それが、さらに皆さん方の業界の安定的な収益基盤の確立にも繋がるものと思う」を話しました。
森田敏夫・日証協会長は「私達の命題は、動き始めた『貯蓄から投資へ』の流れを一時的なブームに終わらせることなく、さらに大きなうねりにそして持続的なものにできるよう、業界をあげて取り組んでいくことだと考えている」と説明。「政府が打ち出している資産運用立国の実現に向けても、前向きな変化を追い風に、インベストメントチェーンを構成する各社による一体的な取り組みを推進していく」と述べ、官民一体での投資拡大策を継続する考えを強調しました。