finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

リテール担当も知っておきたい「プライベートデット」の現在 銀行の自己資本強化で脚光
アライアンス・バーンスタインの運用責任者に聞く

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2024.06.13
会員限定
リテール担当も知っておきたい「プライベートデット」の現在 銀行の自己資本強化で脚光<br />アライアンス・バーンスタインの運用責任者に聞く

銀行などの金融機関以外のいわゆる「オルタナティブ・レンダー」が貸し手となる「プライベートデット」が急速に普及している。金利上昇局面でも為替ヘッジコストに負けないリターンが取れる数少ない資産クラスとして、機関投資家の間で採用拡大が続く。今後起きうる景気後退の局面でもプライベートデットは有効か。アライアンス・バーンスタインで中小企業を融資対象とした「ダイレクト・レンディング」の運用戦略を担当するブレント・ハンフリーズ氏に、プライベートデット市場の現在地と今後の展望について考えを聞いた。

――FRBの政策変更のタイミングと、利下げのタイミングをどのように予測しますか。11月の米国大統領選の動向がドル相場や金融政策、米国景気に与える影響は。

私たちの見通しでは、ECBや英国に続いて、今年夏ごろにも米国が利下げに踏み切るだろうとみています。大統領選に関しては一定程度のインパクトを見込みつつ、相場への極端な影響は生じないだろうとみています。私たちはトランプ氏、バイデン氏双方の大統領時代を4年間ずつ経験済みであり、どちらの体制下でも米国経済が成長を続けてきたという事実こそが重要です。

注目すべきなのは、個々の企業の業績や財務といったファンダメンタルズです。マクロ環境に過度に引っ張られることなく、景気サイクルのあらゆる局面において安定的なビジネスモデルを実現しているかどうかが私たちの関心事です。

 

――米国でダイレクト・レンディング市場が拡大している背景について教えてください。伝統的資産やプライベート・エクイティと比べたダイレクト・レンディングの投資妙味はどこにありますか。

ダイレクト・レンディングは現状、1.5兆ドル(約230兆円)の市場規模があります。これはバンクローン(銀行などが主に投資適格未満の企業に対して行う貸付)のマーケットとほぼ同じ水準です。

ダイレクト・レンディングがこれだけの規模へと拡大した背景には、長期的な構造変化があります。1994年時点では、信用力の低い企業向けの融資である「レバレッジド・ローン」のシェアの7割超を銀行が占めていました。しかしリーマン・ショック以降、バーゼル規制を含めたルール強化の流れの中で、銀行のバランスシートを改善するよう求める圧力が高まっていきました。

加えて株式市場においては、銀行に対しローンではなく手数料ビジネスによる収益拡大を求める機運が強まり、銀行の貸し手としての存在感が薄れていったのです。結果的に足元では数字がかつてと比べて逆転し、市場の8割近くをオルタナティブ・レンダーが占めています。

私は90年代からプライベート投資に携わってきましたが、当時は銀行と私たちとの間で厳然たる棲み分けが存在しました。しかし2000年代前半にダイレクト・レンディング市場が生み出されてからは、シニアからジュニアまで幅広い借り手に対するビジネスがオルタナティブ・レンダーへと開放されていったのです。

 

――日本では政府がオルタナティブ投資の促進策を打ち出していることもあり、多くの年金基金や生保業界がプライベート・アセットへの投資拡大を検討しています。この現状をどう考えますか。

ダイレクト・レンディングが投資家から評価を集めている背景にはさまざまな要因があります。ダイレクト・レンディングの過去のトラックレコードを見ると、バンクローンやハイイールドより損失率が低く抑えられ、デフォルト時の回収率が高い傾向にあります。ハイイールドは担保がない一方、ダイレクト・レンディングは返済順位が高く、かつ担保もついているため、回収の可能性が必然的に高く維持できているのです。

LTV(資産総額に対する負債の割合)も平均40%と非常に低く、エクイティクッションと言われるバッファが60%に上るため、企業価値が毀損しても損失範囲を抑えられる構造になっています。

また、ハイイールドなどいわゆる伝統的な固定金利型の資産クラスは、デュレーションリスク(金利上昇時に保有債券の平均回収期間に応じて価格が下落するリスク)がついてまわります。その点、ダイレクト・レンディングは変動金利なので、こうしたリスク自体が存在しないという強みがあります。

ダイレクト・レンディング市場の拡大の背景には、借り手にとっての使いやすさという要因もあります。たとえば返済の優先順位が高いシニアローンだけで貸すこともできれば、優先順位の低いジュニアローンまで踏み込んでユニトランシェ(シニアローンとジュニアローンの混合)で資金を供給することも可能です。理屈上は銀行も同じ方法で貸出が可能ですが、規制強化を背景に及び腰になっているため、借り手からみても柔軟性の点で銀行の使い勝手が低下しているのです。

私たちは決して銀行が貸したくない企業に資金を提供しようとしているのではなく、反対に安定的な成長を見込めるような企業を選定し、しっかりとリスク管理をしながら借り手となる企業を見極めているのです。

 

――伝統的な株式や債券を中心にポートフォリオを組み入れている投資家にとって、ダイレクト・レンディングを組み入れることで、どのような効果が期待できますか。

必ずしも全ての投資家が高い流動性を求めているわけではないという事実に加え、ポートフォリオ全体でみた分散効果も、ダイレクト・レンディングが支持を集める要因となっています。市場性が強く、株式相場との相関性が高いハイイールドなどと比べ、ダイレクト・レンディングの価値は安定的と考えられます。

当社の運用戦略における2008年以降のネットリターンは11%強となっており、ポートフォリオ分散における有効な選択肢であると同時に、リスク調整後リターンが非常に高いアセットクラスであると言えるでしょう。

 

――プライベートデット戦略ではマネジャーごとのパフォーマンス実績やリスク管理能力の差が大きい分野です。優れたマネジャーを選ぶにはどのような点に留意していますか。

クレジット戦略を取るからには、ダウンサイド耐性に関する考え方はパフォーマンスの安定性の観点から非常に重要です。アライアンス・バーンスタインの運用においては、スポンサーとの交渉力を確保するため、基本的にはディールを主導できるポジションを得られる案件に注力し、セクター専門家による精緻な借り手調査を行ったうえで、条件設定を含め常にできるだけ貸し手優位になるよう案件を組成しています。全体の投資案件の80%程度においてディール主導のポジションとなっており、また90%以上の案件でコベナンツの設定を行っています。過去のストレス局面におけるプライベートデットの相対パフォーマンスをみると、弁済順位や担保の有無、コベナンツの設定といった違いが、パフォーマンスの優位性を生みだしていることが見て取れるでしょう。

 

――日本でもプライベート・アセットの民主化、大衆化が唱えられています。日本市場での戦略は。

米国においてプライベート・アセットは富裕層に広がり、やがて富裕層以下のマスリテール層へと浸透していきました。富裕層チャネルにおいては流動性に対するニーズはそれほど高くないものの、資金管理の観点からオープンエンド型の商品が好まれる傾向にあるようです。

当社にとって米国における投資家の中心は富裕層であるため、ダイレクト・レンディングは全てオープンエンド型で組成しており、ポートフォリオ管理や顧客サービスなどの長い経験を有しています。

リテールチャネルでは、流動性に対するニーズが高い傾向にあり、セミリキッド型のプロダクトが不可欠だと考えています。当社もセミリキッド型のダイレクト・レンディングファンドを立ち上げる予定となっており、日本においても当プロダクトの積極的なマーケティングを検討しています。

――FRBの政策変更のタイミングと、利下げのタイミングをどのように予測しますか。11月の米国大統領選の動向がドル相場や金融政策、米国景気に与える影響は。

私たちの見通しでは、ECBや英国に続いて、今年夏ごろにも米国が利下げに踏み切るだろうとみています。大統領選に関しては一定程度のインパクトを見込みつつ、相場への極端な影響は生じないだろうとみています。私たちはトランプ氏、バイデン氏双方の大統領時代を4年間ずつ経験済みであり、どちらの体制下でも米国経済が成長を続けてきたという事実こそが重要です。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #プライベートアセット
  • #アライアンス・バーンスタイン

おすすめの記事

楽天証券の売れ筋で「オルカン」がトップに。米国市場への警戒感を背景に「世界のベスト」もランクイン

finasee Pro 編集部

企業型確定拠出年金の制度運営に中小企業ならではの距離感を活かす―新宮運送が構築した“一人ひとりに寄り添う”サポートの形

finasee Pro 編集部

経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行

Ma-Do編集部

【文月つむぎ】運用立国議連の新「緊急提言」を読み解く!NISA、税制の見直しで対応が求められる3つのポイント

文月つむぎ

SBI証券で再び米国大型テック株への関心高まる、新設「メガ10インデックス」もランクイン

finasee Pro 編集部

著者情報

finasee Pro 編集部
ふぃなしーぷろへんしゅうぶ
「Finasee」の姉妹メディア「Finasee PRO」は、銀行や証券会社といった金融機関でリテールビジネスに携わるプロフェッショナルに向けたオンライン・コミュニティメディアです。金融行政をめぐる最新動向をはじめ、金融機関のプロフェッショナルにとって役立つ多様なコンテンツを日々配信。投資家の皆さんにも有益な記事を選りすぐり、「Finasee」にも配信中です。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
楽天証券の売れ筋で「オルカン」がトップに。米国市場への警戒感を背景に「世界のベスト」もランクイン
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
企業型確定拠出年金の制度運営に中小企業ならではの距離感を活かす―新宮運送が構築した“一人ひとりに寄り添う”サポートの形
J. フロント リテイリングに聞く企業型確定拠出年金制度運営の秘訣―継続投資教育の参加率が驚異の80%超えの理由とは?
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
第16回 資産運用にまつわるさまざまな常識を疑え!【総集編】
「資産運用において疑うべき常識」を振り返る
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
J. フロント リテイリングに聞く企業型確定拠出年金制度運営の秘訣―継続投資教育の参加率が驚異の80%超えの理由とは?
第16回 資産運用にまつわるさまざまな常識を疑え!【総集編】
「資産運用において疑うべき常識」を振り返る
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉖
~米国投資信託最新事情
ミューチュアルファンド初の30兆ドル突破も、米国株ファンドから過去最大の資金流出
【運用会社ランキングVol.3/販売会社一般編②】販社からの評価を高める「野村」の底力と「フィデリティ」の運用力、2年連続で総合トップの「アモーヴァ」は安泰か
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら