昨年11月27日、金融庁から「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案が公表され、意見が募集された。
全国銀行協会・全国信用金庫協会ほか業界団体も即座に反応し、各々の会員に意見を求めたため、相応の意見が寄せられた事態を見込む。これらを踏まえ、4月1日からの適用が予定されている模様だ。
当局が監督指針を改正する背景には、新型コロナの位置づけの変更に合わせ、地域金融機関に経営戦略の見直しを迫る意図がある。昨年5月に感染症法の位置づけが5類に移行したことや、7月からゼロゼロ融資の返済が本格化したため、中小・地域金融機関側の対顧客姿勢を転換させたい意向が明記されている。金融庁の言葉を借りれば、「支援」から「経営改善・事業再生支援」への“フェーズ転換”の局面を迎えている。
そうした前提を踏まえた上で、金融機関の経営者・実務者目線をもって改正案の新旧対照表を対比すると、「金融機関側が具体策の策定や進捗管理に悩まされるだろう」と容易に想像できる箇所が少なくない。誤解を怖れずに言えば、近時、金融庁が個別金融機関への総合立入検査よりも金融サービス利用者の声を聴くことを優先した結果、金融機関の実態把握が不十分となってる事態を憂慮する。
競合と手を取り合ったままで新規融資を開拓できるのか
その仮説の下で、改正案の特徴的な箇所を挙げる。まずはⅡ-4の金融仲介機能の発揮部分だ。