世界でのオルタナティブデータの市場規模は約44億ドル(2022年時点)とされており、2030年にはその50倍の拡大が見込まれている成長分野です。しかし、国内運用業界のオルタナティブデータの活用は始まったばかりで、まだまだ発展途上にあると言えるでしょう。
日本のデータ市場のさらなる活性化のためには①レギュレーション、②人材不足、③コストという、個別企業だけでは解決が難しい課題を乗り越えていく必要があります。そこで、中立的な立場からこれらの問題に対応するべく、2021年に一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会を設立しました。
当初の会員は十数社・団体でスタートしましたが、この3年弱で116まで増えています(2023年11月27日時点)。会員はデータのユーザーやベンダー、研究機関、公的機関などさまざまで、協議会を通して多様な意見交換が行われています。
協議会として、上記の3つの課題に対してさまざまな角度から取り組んでいます。①レギュレーションについては、正しくデータが利活用されなければ業界自体が縮小しかねません。そこで、海外の事例も参考にしてチェックリストを作成し、加入企業にはその内容を理解した上で適切な体制を整えることを求めています。
②人材不足に関しては、データサイエンティストは多くの分野で求められていますが、金融や経済分析のスキルを併せ持つ人材は特に少ないです。加えて金融機関内においてもデータ人材の地位が確立されているとは言い難い状況もあります。
③コストは、データの購入とそこから得られる効果を明確に説明することは困難であることが挙げられるでしょう。オルタナティブデータをどう使用して、そこからどんな成果が生まれたのか、という事例は表には出てきにくいものです。
そこで②と③に対しては、協議会を通してさまざまなデータのユースケースを示すことや、メンバー内で知見を共有することが有効でしょう。実際、協議会での情報交換からベンダー同士が連携し、新しいアイデアが生まれた事例も多く存在します。協議会としても他の関連団体との連携を進めて情報交換を積極的にしており、これにより、データ分析に必要なスキル標準の定義を行うことも可能になります。
加えて、会員を対象にしたアンケートを基に「オルタナティブデータFACTBOOK」というレポートを作成して公表したり、フォーラムを開催するなど、情報発信にも力を入れています。私自身、海外のセミナーなどに参加すると、地政学リスクなどの影響でアジア地域の投資において外国人投資家による日本市場見直しの動きを感じます。オルタナティブデータの提供が進めば、海外からの投資も促されるのではないでしょうか。
オルタナティブデータの活用は資産運用立国を掲げる政府の方針とも合致していますし、アクティブ運用が多様化すれば国内市場の厚みも増すでしょう。これまで協議会が行ってきた地道な努力が、実を結びつつあるように感じられます。