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オルタナティブデータが「代替」でなくなる未来へ
専任部署を新設して運用者にインサイトを提供

オルタナティブデータ活用の最前線

finasee Pro 編集部
finasee Pro 編集部
2023.12.26
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オルタナティブデータが「代替」でなくなる未来へ<br />専任部署を新設して運用者にインサイトを提供

運用業界において、にわかに注目される存在となったオルタナティブデータ。運用会社では数あるオルタナティブデータをどのように活用しているのか、一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会に所属する各社にインタビューした。第4回は、リサーチ部門で幅広い戦略にオルタナティブデータ活用を進める三井住友トラスト・アセットマネジメントの松本 宗寿氏に話を聞いた。*この記事はオルイン12月号の記事を抜粋したものです

――まず、オルタナティブデータに関連した貴社の取り組みについてお聞かせください。

グローバル運用を行う中でデータの収集や分析はこれまでも重視していましたが、オルタナティブデータの活用が加速したのはコロナ禍がきっかけでした。人々の行動様式が前提から覆されるような事態に遭遇し、その変化を正しく捉えるにはこれまでにない角度からの情報が求められました。

それを端的に表しているのが、コロナ禍で実施された旅行支援事業「Go Toトラベル」に関連するデータでしょう。感染拡大が懸念された時節柄もあって、メディアなどではGo Toトラベルに対してややネガティブな言説も飛び交っていました。しかし、実際には旅行関連のWebサイトのアクセス数やスマートフォンアプリのダウンロード数は増えており、むしろ消費者は旅行に前向きであるということが、データから明らかになりました。こうした事例などからオルタナティブデータの有効性を実感したことで、運用への本格的な導入が進みました。

三井住友トラスト・アセットマネジメント リサーチ運用部 データサイエンスユニット ユニット長    松本 宗寿 氏

私が所属するデータサイエンスユニットは、まさにオルタナティブデータを運用に取り込むための部署として、2023年4月に創設されました。現在、若手を中心に10名弱のデータ専門家を抱えており、アナリストやファンドマネジャーに対して投資アイデアの基になるインサイトを提供しています。

――貴社ではどんな視点で、オルタナティブデータを活用しているのでしょうか。

オルタナティブデータの着眼点を分解すると、これまでの経済指標などに比べて「早く」あるいは「深く」、投資判断に必要な情報を知ることができるという、2つの視点に分けられます。前者では、Webサイトにどんな人がどれくらいアクセスしているかを示すデータが例として挙げられるでしょう。これを駆使すれば、Web上で完結する契約申し込み数など、特定の企業の収益に直結するような重要な指標を推定することができます。

個別銘柄に加えてセミマクロ的な視点からの分析も可能で、Googleの検索データから外国人観光客数を予測できたことも興味深い例です。当社の分析では、Googleで外国人が日本国内の旅行に関して調べる回数が増えると、その約6カ月後に訪日外国人が増加するという関連性が見られます。この分析を基に、「2022年12月に訪日外国人客数が100万人を超える」という予測を半年前の段階で出していました(図)。そこで株価へのインパクトが高い銘柄を選択すればアルファ獲得につながるでしょうから、これらはまさしく「早く」という観点からの分析事例です。

 

「深く」という観点では、主に企業の非財務情報の評価に焦点を当てています。例えば、転職サイト「OpenWork」の社員の口コミをもとにクレジット・プライシング・コーポレーションが開発した「VCPCクチコミインデックス」を利用することで、企業文化や働きやすさといった人的資本にもかかわる指標の作成と改善に役立てています。

また、こうした情報を運用にどう生かせるかという点を、ジャッジメンタル、クオンツといった運用手法を問わず、日々ファンドマネジャーと議論しています。これまで定性と定量の運用の間には大きな隔たりがありましたが、オルタナティブデータがそれを埋める役割を担うと感じています。

従来、クオンツ運用には統計的な厳密さやデータの蓄積が求められてきましたが、ツールや手法が進化したことでオルタナティブデータを活用できる可能性が拡がっています。一方のジャッジメンタル運用は感覚や経験なども加味しながら投資判断をしていましたが、そうした定性的な情報がデータ化されるケースも増えています。今後、データの種類や使用方法がますます拡がれば、アルファを生み出す原動力にもなるでしょう。

オルタナティブデータの普及は運用業界の常識を覆すか

――AIや機械学習といった最新技術のアップデートが日々報道されています。データの拡がりとともに、それを分析する手法にも変化があるのでしょうか。

機械学習に代表される先端技術を分析に使用するメリットには、次の2点が挙げられます。1点目は、従来の定量的な分析をより低コストかつ容易に実施できる点で、2点目は、これらの技術が新たなデータ生成の基盤になる可能性があることです。

加えて、いま話題のChatGPTでも使用される大規模言語モデルを用いることで、膨大なデータから異なる事象間の関連性を測定することも容易になるでしょう。従来は演繹的、つまり「Aが発生すればBの株価が上昇する」といった理論的な前提から、それに当てはまる銘柄やセクターを選び出すというアプローチが取られてきました。

しかし、無数のデータとそれを分析できる技術があれば、数ある情報群の中からリスクリターンの改善につながる事象を選び出し、有効な投資アイデアかどうかを素早く検証するという、帰納法的な運用が可能になるのです。オルタナティブデータやAI・機械学習の普及は、運用の分析プロセスを大きく変える可能性を秘めていると感じています。

――運用業界とオルタナティブデータの、今後の注目点はなんでしょうか。

工場の生産工程や家庭の電化製品など、さまざまな分野でIoT(Internetof Things)が身近になる中で、あらゆる経済事象がデータ化されていくことが想定されます。また自社のビジネスを生かして、関連するデータを提供する会社の数も増えている印象です。

データの拡充とともに活用が進んでいけば、オルタナティブデータはもはや「オルタナティブ」ではなくなる可能性もあると考えられます。そうなれば、これまでの経済指標や財務情報とオルタナティブデータを区分けすることに大きな意味はなくなるでしょう。

 

――まず、オルタナティブデータに関連した貴社の取り組みについてお聞かせください。

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