「債券ファンドはいらない」――。株式ファンドよりリターンは劣る、安全かと思えば金利上昇で大きく値下がりする、分配金も大したことはない。そんな声が、若い担当者を中心に現場からも聞こえてくる。
一方で、債券には株式にはない重要な役割がある。景気後退局面での値動きの安定性や、株式との分散効果は、資産全体の設計において欠かせない要素だ。また、債券は、発行体の業績が低迷しても、デフォルトがなければ元利金を受け取れることが大きな特徴である。では、債券ファンドは何を見て選べばよいのだろうか。第2回は、債券ファンドの選定の判断軸について整理したい。
純資産残高ランキングから何が分かるか
図表1は、2026年7月基準で、主要公募投信の国内債券型・国際債券型について、同一シリーズの決算コースや為替ヘッジコースなどを統合し、純資産残高の大きい順に並べたものである。第1回の株式ファンドは資金流入額でランキングしたが、債券ファンドは足元の資金流入自体が細っている商品も多いため、今回は長年の積み上げを映す純資産残高で見ることにした。
上位を見ると、「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」や「野村米国ハイ・イールド債券投信(通貨選択型)」「みずほUSハイイールドオープン」といったハイイールド債が複数入るほか、「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド」「ピムコ・インカム・ストラテジー・ファンド」のようなマルチセクター型、「三菱UFJ/マッコーリー グローバル・インフラ債券ファンド〈世界のいしずえ〉」のようなインフラ関連の債券に投資する商品も顔を出す。一方で、「グローバル・ソブリン・オープン」のような伝統的な世界国債ファンドも、なお上位に残っている。株式ファンドのランキング(第1回/図1参照)は、インデックスファンドを含めると上位がインデックスだらけになってしまうため、あえてアクティブファンドのみで集計した。一方、今回の債券ファンドはインデックスファンドも含めて集計したが、上位10本に入ったのは「eMAXIS Slim先進国債券インデックス」の1本のみだった。債券ファンドの世界では、株式ファンドほどにはインデックスが浸透していない。
ここで留意したいのは、債券ファンドというくくりだけでは、商品の性格を語れないということだ。信用リスク、デュレーション(金利変動リスク)、為替リスクの大きさによって、値動きの特徴はまったく異なる。商品選定においては、こうした特徴が顧客の資産全体の中でどのように生かされるのかを考える必要がある。
攻めの債券・守りの債券
筆者が債券ファンドの商品選定で最初に行うのは、攻めと守りの役割による分類である。
守りの債券の役割は、資産全体の価格変動を抑えることにある。日本国債、先進国国債などの株式と相関の低い商品がこれにあたる。信用リスクを抑えた運用が中心で、景気後退局面でも比較的値動きが安定している。ただし、デュレーションが長い商品には思わぬリスクがある。2022年から2023年にかけては、地政学リスクの高まり等によるインフレと、それに対応した急激な金融引き締めにより、世界的に長期金利が上昇し、債券価格が下落したことは記憶に新しい。高格付債券だから安心と決めつけず、金利変動リスクをどこまで許容する設計なのかを、一つひとつ確認する必要がある。
これに対し攻めの債券は、国債を上回るリターンを狙う商品である。社債やハイイールド債、新興国国債などが挙げられる。タームプレミアム、信用プレミアム、カントリープレミアムを収益源とし、リターンは狙えるが、景気調整局面では株式と同じ方向に動くこともあり、分散効果は限定的な面は否めない。また、割安債券の価格修正時の売買益を狙う手法やデュレーションをあえて長く取ることで、金利低下局面での値上がりを狙う攻めの要素として使う商品もある。
ここで強調しておきたいのは、攻めと守りの違いは商品単体ではなく、資産全体の中での役割の違いだという点である。併せ持つ資産を考慮せずに商品を選ぶと、この役割を見誤ることになりかねない。
期待リターンの源泉を見る
筆者が運用会社から債券ファンドの提案を受けたとき、まず確認するのは、株式ファンド同様に期待リターンがどのようなプレミアムの積み上げでできているかということである。
債券の期待リターンは、無リスク金利にタームプレミアム、信用プレミアム、カントリープレミアム、為替プレミアムなどを積み上げたものと捉えることができる。難しい理論として理解する必要はない。大切なのは、その商品がどのプレミアムを取りに行っているのかを、販売会社自身の判断軸として持っておくことだ。信用プレミアムを取りに行く商品なのか、為替プレミアムに依存した商品なのか。源泉が分かれば、どのような局面で苦戦しやすいかも見えてくる。
為替をどう考えるか
外債に投資する債券ファンドを検討する際には、為替の扱いが重要な論点になる。日本はデフレ・円高・低金利の時代から、インフレ・円安・金利のある世界へと移行した。この変化のなかで、為替ヘッジの有無をどう考えるかは、多くの販売会社が悩むテーマだろう。日本では円安になると輸入物価が上昇し、生活コストも上がりやすい。その意味では、外貨資産を保有することは、円安による購買力低下への備え、いわば一種の保険と考えることもできる。
ただし、ヘッジあり・なしのどちらが優れているかを議論しても、答えは出ない。重要なのは、その商品が担う役割に合っているかどうかである。元本の安定を優先するための守りであればヘッジありが有力な選択肢になるが、購買力としての価値を確保するための守りであれば、為替プレミアムも収益源の一部と捉え、ヘッジなしを選択肢に含めることも合理的である。
想定顧客を見る
商品選定の最後に問われるのは、この商品が誰のための商品かということである。期待リターンの高さだけで判断してはならない。
守りの債券が向いているのは、いずれ訪れる相続を意識して株式比率を下げたい顧客や、NISAの成長投資枠を活用しつつ値動きをできるだけ抑えたい顧客などである。債券ファンドを商品ラインアップに加えるのであれば、預金や国債では代替できない付加価値を明確に説明できなければならない。
攻めの債券が向いているのは、インカムや利回りを重視し、株価が低迷しているときでもリターンを狙いたいという顧客である。一方で、元本の安定を最優先する顧客や、値下がり局面への理解が乏しい顧客には、攻めの債券は向かない。想定顧客を明確にすることは、同時に向かない顧客を見極めることでもある。
図表2は、こうした考え方を商品選定ダッシュボードとして整理したものである。特に債券ファンドでは、信用リスクだけでなくデュレーションと為替リスクをどう組み合わせているのかが、商品の役割を決める重要なポイントとなる。
商品選定とは、顧客の資産全体の中でどの役割を担わせるのかを考え、その役割に応じて、どのリスクプレミアムを取り、どのリスクは取らないのかを判断することである。株式ファンド全盛期であっても、過去を見る限りそれが永続することはあり得ない。時々で変化する顧客の投資方針に対応するためにも、債券ファンドのラインアップは欠かせない。
※本稿における意見や見解は、筆者個人の経験と考察に基づくものであり、所属する組織の見解や方針を示すものではありません。
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