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唐突感ある「地域金融力」の論点化、金融庁の狙いの"ウラのウラ"を探る【オフ座談会vol.8:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部
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2025.09.24
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唐突感ある「地域金融力」の論点化、金融庁の狙いの"ウラのウラ"を探る【オフ座談会vol.8:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

 

かやば太郎氏 「地域金融力」なんて言葉が、にわかに注目を集めていますね。

本石次郎氏 金融庁は8月に公表した金融行政方針で、「地域金融力強化プラン」なるものを年内に策定する方針を打ち出しました。今月5日には金融審傘下の新たな作業部会である「地域金融力の強化に関するワーキンググループ」が始動し、議論が始まっています。

財研ナオコ氏 地域金融力か……「顧客本位」とか「プロダクトガバナンス」とかと同じように字面がザックリしすぎていて、何だかつかみどころがない表現だね。

かやば氏 政府は一応の定義として「有望なプロジェクトへの資金供給(投融資)にとどまらず、地域事業者へのM&A支援、地域に必要な事業・人材の呼び込み、地域企業のDX支援等を通じて、地域経済に貢献する力」としています。

財研氏 まあ、言いたいところは分からなくはない。でも、どうしてこのタイミングで議論を始めたのかな。

かやば氏 M&A支援、人手不足、DXの支援を通じて地域経済を支えるといった議論の流れですが、初回会合で委員側からは「そもそも地銀にその機能を担う人材が十分に在籍しているのか」といった厳しい指摘が上がっていました。ある地銀の幹部は「IBMやNRIに勤めている優秀な人材を、都市部から離れた地域に引き込むハードルは非常に高い」とこぼしていました。

財研氏 唐突に「あなたたちの役割は銀行業ではない」なんて言われても、当事者である地銀の人々が一番困惑するよね。

本石氏 ワーキンググループ新設は、地銀再編の機運を再び盛り上げるための地ならしではないか、といった観測もあります。初回会合では、人口動態の専門家が地方社会の持続可能性について、政府見解よりも厳しめの分析結果を示し、有識者委員からは、地域経済の支え手としての機能を維持するためには、県境を越えた広域的な統合もやむなしといった趣旨の意見が相次いでいました。

財研氏 たしかに政治状況の変化で追い風が吹けば、有識者たちの声が制度整備に結び付く可能性はあるだろう。でも現実的に考えて、今の金融庁に地銀統合を実現させる力があるとは思えない。「大手プラットフォーマーや有力地銀が進める広域提携など民間側の動きに同調するのが現実解では」(元金融庁幹部)といった見方もある。

本石氏 石破茂首相による退陣表明を前にして、「地域金融力」という漠然とした言葉を掲げたこと自体に意味があるのかもしれないですね。表面的には、地方創生を打ち出してきた石破カラーの反映であり、一方で、議論の中身をみると、総花的な地方創生ではなく少数の都市部への集約を進める明確な「脱-石破路線」が見受けられます。

かやば氏 資産形成促進策に造詣が深い井藤英樹前長官と差別化を図り、伊藤豊長官の独自色を打ち出そうした側面もありそうですね。

財研氏 ところで、自民党総裁選の行政運営への影響も関心を集めている。

かやば氏 こう言ってはなんですが、最近の金融庁の行政運営の中で「石破マター」は非常に限られていましたから、総裁選後も大きな方針転換が起きるとは考えにくいでしょう。

財研氏 たしかに、極端な風向き変化がない限り、岸田文雄氏が率いる資産運用立国議員連盟と金融庁との連携が揺らぐことはなさそうだ。木原誠二氏らを中心として岸田路線が受け継がれていくだろうし、監督局を2つに分ける組織改編についても、既に規定路線と見られている。

かやば氏 保険分野の監督機能強化も注目点ですね。ここに来て損保だけでなく、生保まわりでも情報漏洩といった深刻な不祥事案が次々に明るみに出てきており、体制見直しの機運を勢いづけることになりそうです。

本石氏 巷では少数与党化、自民党の派閥解消によって族議員の力が低下し、金融庁が以前に比べ業界に委縮しなくなっているといった話もある。

財研氏 「1軍」と呼ばれるような、庁内で評価の高い人材が銀行まわりに偏っていた当局内の構図も、組織改編を機に大きく変化するかもしれないね。

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