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「貯蓄から投資へ」拡大のカギはDCにあり 日本版「安全な港ルール」の整備を
米国投信会社協会(ICI)トレイシー・ウィンゲート氏

finasee Pro 編集部
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2024.12.06
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「貯蓄から投資へ」拡大のカギはDCにあり 日本版「安全な港ルール」の整備を<br />米国投信会社協会(ICI)トレイシー・ウィンゲート氏

米国でミューチュアル・ファンド(オープンエンド型集団投信)は、今年で100周年を迎える。UCITSなどの規制ファンドおよびファンドの運用会社を代表する世界的な資産運用業界団体の米国投資会社協会(ICI)でチーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーを務めるトレイシー・ウィンゲート氏に、「貯蓄重視から投資重視へ」と移行した日本市場への見解と期待などを聞いた。

――日本では新NISAが始まり、家計の金融資産が貯蓄から投資へと向かう動きが活発になっています。日本の資本市場の現状をどのように評価しますか。

日本のNISAプログラムは短期間で大きな成功を収めていると見ており、特に若い世代が新たに口座を開設する心強い動きが顕著です。この勢いは、日本全体で貯蓄から投資への流れがさらに進む鍵となります。

日本の資本市場は成長の初期段階で、 今後10~20年にわたり資産運用業界がこの変革を支援できる非常に大きな可能性があるといえます。投資信託(すなわちUCITS)をはじめとする集団投資スキームは高度な投資家保護を提供しているため、この役割に理想的に適しています。透明性と流動性を提供するように設計されており、非常に利用しやすいため、貯蓄から投資への移行を投資家に促すのに理想的です。やはり長期的な経済目標を達成しようとする個人のリテール投資家にとっては、 透明性と流動性の両方を重視した投資商品を選ぶことが重要です。投資信託は、規制された構造と投資家保護の仕組みを備えており、こうしたニーズを満たす優れた選択肢で、投資家がより投資志向のアプローチに移行する際に、信頼できる道筋を提供します。

   ICIチーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサー              トレイシー・ウィンゲート氏

――日本市場のポテンシャルは。

日本では、個人型確定拠出年金 (iDeCo)を含む確定拠出年金(DC) プランの拡充に大きな可能性が眠っています。DC加入者の増加によって金融市場により多くの資金が流入するだけでなく、長期投資のカルチャーに拍車をかけ、また育むでしょう。

世界一の証券投資大国である米国では、個人投資家のうちミューチュアルファンドに初めて投資したきっかけが職場のDCプランだった方が6割を占めています。日本が同様の成長を促すには、DC拠出額を増額し、DCプランで のデフォルト金融商品の選択肢を元本確保商品から成長重視商品に移行することが大切です。

米国は2006年に「セーフ・ハーバー (安全な港)ルール」を導入し、DCプランの適格金融商品が投資損失を被った場合、年金の運用マネジャーに法的保護を提供しています。この法律は、プラン運用者が訴訟リスクにさらされることなく、成長志向の商品を導入す ることを奨励するのに役立っています。 日本でも同様の法律が制定されればDC プランにおける成長志向のオプション の利用がさらに促進され、日本の家計の資産形成と経済的な幸福度の向上につながるでしょう。

さらに、投資家の選択肢を拡大することが不可欠で、パッシブ運用の商品だけでなく、高品質なアクティブ運用商品の提供にも重点を置きます。アクティブファンド販売にかかる手数料体系に関しては、日本では必ずしも理解が十分ではなく、また開示も統一されていませんが、こうしたパフォーマンスベースの手数料は、投資運用業界とより広範な資本市場のエコシステムの両方を支える上で重要な役割を果たしています。これらの手数料に関する透明性と開示を強化することは、アクティブファンド商品に対する投資家の理解と信頼を高めるために必要です。加えて、投資オプションに関するフィーベースのアドバイザリーサービスがよ り広く利用可能になることは有益であ り、投資家に対して、多様な投資戦略 とオプションに関する情報に基づいたガイダンスを提供することにもつながります。

――日本の資産運用業界に求めることは。

日本の資産運用業界が、日本の資本市場の強化において業界の果たす重要な役割について積極的に発言することを奨励します。資産運用業界が盛り上がればグローバル投資家からの注目も一層高まり、ひいては日本の国内運用業界とより幅広い資本市場の両方の成長につながるでしょう。

また、銀行、保険や証券会社のグループと資本関係のない独立系の運用会社が業界で果たす役割は重要です。彼らは代替的な視点を提供し、業界の展望を多様化する手助けをしています。 米国や欧州では、独立系の資産運用業が信頼を醸成してきた長い歴史があり ます。日本でも貯蓄から投資への流れを加速するには、マーケットリスクに対する投資家の信頼を醸成する必要があります。日本の独立系資産運用会社のプレゼンスを高めることは、この必要な目標の達成に役立つでしょう。

―― 投信をはじめとする金融商品の販売に携わる方へメッセージを。

投資家の方に幅広いアクセス機会を提供することが不可欠です。強固な業界のインフラ整備には時間とリソース が必要であると認識しつつ、販売チャネルの成長と多様化は業界にとって重要な要素です。 米国では、AIを含むテクノロジーの活用により、個人投資家へのアクセスポイントである販売チャネルが急速に多様化しています。しかし、投資選択に関するアドバイスを求める際の個人的なガイダンスのニーズは依然として高いままです。これは特に市場が不安定な時期に顕著です。投資家は、特に相場が急変動したときには不安になり ますので、当然のことながら、安心感 と個別アドバイスを求めます。これに代わるものはありません。まさにこのような不確実な時期にこそ、対面でのやり取りの価値が明らかになります。[個人投資家への]対面の販売チャネル は、投資家との信頼を構築し、個別サポートを提供するという重要な役割を果たしており、投資家体験に欠かせない要素となっています。

 ―― NISAやDCなどを利用する一般の投資家に向けても一言を。

日本の慣用句でいうところの「急がば回れ」が大切です。 資産育成は少しずつ着実に長期投資を行うことによって実現されるという 理解が日本でもっと広まってほしいと思います。日々変動する相場に一喜一憂することなく、コツコツと投資を続けることで(実はそれが資産形成には重要です)、日本のご家庭でも、長い時間をかけて大きな資産を築くことができます。往々にして知らず知らずのうちに、です。また、日本の資産運用業界は、日本国民が規律ある長期的な資産形成に取り組めるような投資環境の整備に努めています。

――日本では新NISAが始まり、家計の金融資産が貯蓄から投資へと向かう動きが活発になっています。日本の資本市場の現状をどのように評価しますか。

日本のNISAプログラムは短期間で大きな成功を収めていると見ており、特に若い世代が新たに口座を開設する心強い動きが顕著です。この勢いは、日本全体で貯蓄から投資への流れがさらに進む鍵となります。

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