吉岡菜穂さん(仮名、28歳)は職場で叱責を受け続けた結果、うつ病を発症してしまいました。治療に専念するため会社は退職。実家で母親の援助を受けながら静養したおかげでうつ病はやや改善されましたが、それでもフルタイムで働けるようになるまで回復することはありませんでした。

そこで菜穂さんは主治医と相談し、障害年金の請求をすることに決めました。しかし障害年金だけでは先々の収入に不安があります。そのため菜穂さんは短時間でもよいので働くことも検討するようになりました。すると次のような考えが頭をかすめました。

「働くようになったら、障害年金は止められてしまうのではないだろうか?」

不安に思った菜穂さんは、障害年金の専門家である社会保険労務士の筆者に相談することにしました。

悪気はないのにトラブル連発、空気が読めなかった幼少期

面談の席で、筆者は菜穂さんから事情を伺うことにしました。

菜穂さんによると、職場で叱責を受け続けるようになってしまった原因は、菜穂さんの発達障害の特性によるものだったとのこと。

発達障害がある場合、障害年金の請求では幼少期から現在までの状況を病歴就労状況等申立書という書類にまとめる必要があります。そこで筆者は、菜穂さんの幼少期からの状況を伺うことにしました。

菜穂さんは小さい頃から「その場の空気を読む」といったことが非常に苦手で、思ったことをつい口にしてしまうことがよくあったそうです。

例えば小学校の算数の授業中に「先生、その法則はなぜそのようになるのですか? なんか変じゃないですか?」と大声をあげ、授業の進行を中断させることがしばしばありました。また、クラスメイトに対して傷つくようなことを平気で言ってしまうこともありました。

「今日の髪型変じゃない?いつもより顔が大きく見えるよ」
「そのペン、ダサいね。私だったら絶対に使わないよ」

もちろん菜穂さんに悪気はありません。しかし相手にはそれが伝わらないため、よくケンカになってしまったそうです。