夫婦2人になって増えた息苦しさ
休日の朝、実花は洗濯物を干し終えると、リビングのソファに目を向けた。ソファには夫の琢也が寝転がり、テレビを流しながらスマホをいじっていた。
結婚して20年以上、見飽きるほど見てきた光景だった。
リビングに戻った実花はあきれながらテレビを消した。
「おい、見てんだけど」
「ずっとスマホ見てたじゃない」
「音は聞いてたから」
実花は窓の外を見た。朝からよく晴れていた。
「こんなに天気いいんだから、散歩でも行ってくれば?」
「別に用事もないしな」
実花の言葉に琢也は画面から目を離さないまま答えた。素っ気ない言葉に実花はため息をついて、そのまま家事に戻った。
実花はこの間、誕生日を迎え49歳になった。夫の琢也は1つ上の50歳。営業の仕事をしていて、平日は帰りが遅くなることも多い。仕事に関してはとても真面目なのだが、その反動か、休日になると家でだらだらして過ごしてばかりだった。テレビを見て、スマホを触って、眠くなれば昼寝をする。それが琢也の休日の過ごし方だった。
とはいえ以前なら、娘の夏希が欲しいものがあると琢也にねだり、外へ連れ出したりすることもあった。しかし夏希が就職を機に家を出てからはそんな機会もなくなり、必然的に夫婦2人で過ごす休日が増え、朝から晩まで琢也が家でだらだらしていると、さすがに実花も少し息が詰まるようになっていた。
「ねえ、何か趣味でも見つけたら?」
「趣味って急に言われてもなあ。別にやりたいこともないし」
琢也はそう言ってスマホへ視線を戻した。実花は琢也にも聞こえるようにあからさまなため息をついた。
