呼ばれないまま時間だけが過ぎる

「まあ、座って待っていればいいわよね」

三枝子は待合用の椅子に腰を下ろした。しばらくすると、受付番号を呼ぶ声が聞こえ、順番に客が席へ案内されていく。三枝子は自分が呼ばれる番を待っていた。だが、三枝子より後に入ってきた家族連れが立ち上がり、店員に案内されていく。その少しあとにも別の客が呼ばれて立ち上がる。今度は2人連れだった。

「席の都合かしら」

そう考えれば不思議ではない気もした。店員たちは注文を取ったり、料理を運んだりと休む暇もなく動き回っている。三枝子は、そわそわと膝の上にバッグを置き直した。時計を見れば、家を出てから思った以上に時間が経っている。お腹は減っているし、暑いなか歩いてきたことで疲れてもいた。

「もう少し待てば呼ばれるわね」

不安をごまかすように、小さくつぶやいた。

しかし、それからも何組かが三枝子より先に案内された。さすがにおかしい。そう思い始めたころ、若いカップルが店に入ってきた。迷う様子もなくモニターを何度か触り、出てきた紙を取って三枝子の前のベンチに腰を下ろす。

――自分はあんな操作をしていない。

頭がすっと冷えるような気がした。もしかすると、最初から何か間違えていたのかもしれない。そう思った途端、三枝子はソファに座っていることさえ恥ずかしく感じられた。

●ファミレスの見慣れない受付画面の操作が分からないまま待ち続けた三枝子。後から来た客が次々案内される中、自分は受付できていなかったのではないかと気づく…… 後編【「順番はまだかしら」長時間待っても呼ばれない高齢女性…受付ミスのあとの“思いがけない出来事”】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。