finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

「地元中小企業のM&Aに積極関与せよ」…金融庁が監督指針改正で体制整備を迫る

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.09.26
会員限定
「地元中小企業のM&Aに積極関与せよ」…金融庁が監督指針改正で体制整備を迫る

政府はこのところ全国の金融機関に対し、DX推進や人材マッチングなど、各地域の経済を支えるさまざまな機能を担わせようとしています。金融庁が8月末に改正した中小・地域金融機関向け監督指針では、地域企業のM&Aについても積極的に関与するよう業界側に要求しました。同庁幹部は「M&Aはくっつけておしまいではない」として、統合後もサポートを継続できる専門人材の確保を求めています。どのような対応が必要になるのか、指針改正とともに政府全体として発出した要請文の中身とあわせて解説します。

統合作業全般の専門人材確保を求める

改正監督指針では、M&A支援に関する監督上の着眼点を明確化。事業者に対するコンサルティング機能の発揮に向け、(1)事業者のニーズを十分に踏まえながら、PMI(M&A後の事業統合作業)を含むM&A支援に積極的に取り組むこと、(2)そのための専門人材の育成・確保を含む健全かつ適切な業務運営体制の整備を図るよう求めています。

中小企業のM&Aを進めるうえでは、売り手側の企業の経営者保証がハードルになるケースが少なくありません。これを踏まえてさらに改正指針では、株主構成が大きく変わることを金融機関側が把握した場合に、どうすれば経営者保証の解除の可能性が高まるかなどを説明することも金融機関に求めます。改正指針は10月に正式適用されます。

全国の金融機関が音頭をとって各地域でM&Aを活発化し、日本経済全体として経済の効率性を高める――こうした筋書きを実現しようと、金融庁だけでなく政府全体として働きかけを加速させています。

監督指針改正に合わせ、金融庁や中小企業庁など関係省庁の連名で、「金融機関におけるM&A支援の促進等について」を公表しました。円滑な事業承継や企業の成長の手段としてM&Aの重要性が増すなか、金融事業者が「顧客企業に対するコンサルティング機能のさらなる強化の一環として、M&A後の事業統合作業を含めたM&A支援により積極的に取り組むことへの期待が高まっている」と指摘。そのうえで経営者保証に関連し、「既存の債務については経営者保証が残っている場合が多く、M&A・事業承継における支障となりうるとの声もある」と説明しました。株主の交代などで経営体制に大きな変更が生じる場合に、「既存の保証契約についても、保障継続の必要性について検討し、事業者に説明等を行うことが重要」との認識を示しています。

また、最終契約(株式譲渡契約等)締結にむけた交渉やリスク事項の説明等の支援を行うに当たり、M&A成立後のトラブルを回避する観点から、「中小M&Aガイドライン」も踏まえ適切に対応するよう促しています。同ガイドラインは、経済産業省と中小企業庁が作成。今月確定した改定版では、M&A市場の健全な拡大を目的として、仲介業者の手数料透明化などを盛り込んでいます。

脱-経営者保証依存の制度整備も進む

今年6月には事業性融資推進法が成立し、不動産など有形担保と別に、顧客基盤など事業全体の収益性を担保として融資を受けられる「企業価値担保権」制度が誕生しました。これにより、中小企業の資金調達の選択肢が拡大しました。金融庁は経営者保証に依存しない融資慣行の拡大を目指し、経営者保証の徴求基準見直しや既存契約の見直しなどを含め、地銀や系統金融機関から報告をベースにした事例集も公表しています。

金融庁幹部は「M&Aは『くっつけておしまい』ではなく、くっつけた後に会社と会社がしっかり統合するところを含めて金融機関が積極的にサポートしてほしいという期待がある」と説明。「M&A支援をする専門人材を各金融機関の中で育成するのが難しい場合には外部と連携することを含め、健全かつ適切な業務運営体制の整備を図っていただきたい」と呼びかけています。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁

おすすめの記事

みずほ銀行の売れ筋で復調する「米国株ファンド」、「グロイン」もパフォーマンスが伴ってランクイン

finasee Pro 編集部

【連載】こたえてください森脇さん
⑤NISA枠の使い切り、「成長投資枠で一括投資」「つみたて投資枠」どちらがいい?

森脇 ゆき

投信残高は史上最大の119兆円! 「S&P500」に代わって「世界のベスト」と「宇宙関連」が浮上、中国ヘルスケアも!?

finasee Pro 編集部

FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ

川辺 和将

三井住友銀行の売れ筋で光るアクティブファンド、インデックスの不安定さを克服するファンドとは?

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
みずほ銀行の売れ筋で復調する「米国株ファンド」、「グロイン」もパフォーマンスが伴ってランクイン
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
投信残高は史上最大の119兆円! 「S&P500」に代わって「世界のベスト」と「宇宙関連」が浮上、中国ヘルスケアも!?
松井証券の売れ筋にみる優れた世界厳選株式ファンドとは? ピクテと三菱UFJの「純金ファンド」の違いは?
三井住友銀行の売れ筋で光るアクティブファンド、インデックスの不安定さを克服するファンドとは?
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉒
外国株式ファンドの資金流入減速とトレンド変化の兆し
広島銀行の売れ筋に株価乱高下の影響、ランキングを上昇したファンドの特徴とは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑤NISA枠の使い切り、「成長投資枠で一括投資」「つみたて投資枠」どちらがいい?
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
【連載】こたえてください森脇さん
⑤NISA枠の使い切り、「成長投資枠で一括投資」「つみたて投資枠」どちらがいい?
投信残高は史上最大の119兆円! 「S&P500」に代わって「世界のベスト」と「宇宙関連」が浮上、中国ヘルスケアも!?
みずほ銀行の売れ筋で復調する「米国株ファンド」、「グロイン」もパフォーマンスが伴ってランクイン
三井住友銀行の売れ筋で光るアクティブファンド、インデックスの不安定さを克服するファンドとは?
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
「宇宙関連」と「世界半導体株」が抜け出した! 野村證券の売れ筋で目立つ米ハイテク株人気の復権
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
第12回運用資産に関わる常識を疑え!(その1)
銀行預金ではインフレに負けるから投資すべき?
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
「支店長! 業績を上げるためにFP資格は必要ですか」
「顧客意向」を盾に取る釈明に「喝」!?新FDレポートの見逃せない5つのポイント
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか
広島銀行の売れ筋トップ10から「S&P500」が消える。人気を高めているファンドの特徴とは?
足利銀行の売れ筋トップはバランス型、米国株式ファンドのランクアップが目立つ
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら