<前編のあらすじ>
桜は夫・良介から義母・慶子に「5万円必要だから送れ」と頼まれたと聞く。良介は以前、足を骨折した義父のために義実家をリフォームし、その費用も全額負担していた。
桜は、慶子が介護に無関係な改修の費用も求めたうえ、感謝もなく何度も金銭援助を求めることに不満を抱いていた。良介は当初、両親への恩返しをしたいと考えていたが、今はただ断りきれない様子。一方、妹・茉莉は仕事が続かず、義両親への負担は良介に集中していた。
金銭の要求に警戒しながらお盆の帰省で桜たちが到着すると、毎年ほとんど帰省しない茉莉が、約10年ぶりに実家にいた。笑顔で迎える茉莉を見た瞬間、桜はなぜか嫌な予感を覚える。
●前編【「5万必要だから送れって」義実家のリフォーム代まで出した夫…10年ぶりに現れた義妹に“嫌な予感”】
突然実家へ戻っていた茉莉
義父もやってきて、久しぶりに家族が勢ぞろいした。義父は長い距離を歩くことは相変わらず難しそうだったが、杖を使うことにも慣れ、不自由さはそこまで感じなくなったと話す義父の顔は明るかった。世間話を続けていたが、理々杏たちは飽きてしまったのか、散歩してくると言って家を出て行った。
子どもたちがいなくなったタイミングで、慶子はゆっくりと口を開いた。
「良介、ちょっと茉莉のことで話があるんだけど」
慶子がそう言うと、良介と桜は茉莉に目を向けた。しかし名前を出された本人は素知らぬ顔でスマホに視線を落としていた。
「茉莉がどうかしたのか?」
「実はこの子、一緒に暮らしていた男の人と別れたの」
「へえ。そうなんだ」
良介は興味なさそうに返事をした。桜は何を言われるのか分からず、構えながら話を聞いた。
「分かる? その男の人と別れたら住む家がないってことなのよ?」
「……茉莉、仕事はどうしてるんだ?」
茉莉はそこでようやくこちらを見た。
「今は求職中だから」
「……じゃあその男に養ってもらってたってことか」
「そう。でもずっと働け働けってうるさくてさ。そんな感じの生活が続いてたら向こうがブチ切れて家を追い出されたの。こっちは仕事を探そうとしてたのにさ」
茉莉はすねたような口調で説明をした。
「……お前、もう39だろ? 仕事くらいちゃんとやってると思ってたぞ?」
「あのさ、別にこっちだって好きで無職やってるわけじゃないから。いい仕事に就けてたら辞めてるわけないじゃん」
「前の仕事を辞めてからどれくらい経ってる?」
茉莉は少し考えてから口を開いた。
「1年くらいじゃん」
良介は難しい顔をしたまま口を閉じた。
1年も仕事を探して、働いていなかったのならば家を追い出されもするだろう。しかし茉莉は相手が悪いかのような言い方をしている。とことん他責思考なのだと桜は思った。
