義母から飛び出した同居の要求

「そんなことはどうでもいいのよ。大事なのはこれからのことよ。それでね、茉莉をしばらくあなたの家で面倒見てくれないかしら?」

「……え?」

桜は思わず驚きの声を出した。なるべく口出ししないようにと思っていたが、声が出てしまった。しかし慶子は桜の反応を無視して続けた。

「仕事を探そうにも、うちは田舎だし、茉莉がやりたそうな仕事は募集自体がないのよ。良介が住んでるのは都心だし、そっちのほうが仕事は見つけやすいでしょう?」

「茉莉がやりたい仕事ってなんだ?」

良介の質問に茉莉は少し考えてから答えた。

「美容関係かな。できれば広報とかがいいけど」

「広報?」

「そうそう。会社のSNS更新したり、商品紹介するやつ。コスメ系は好きだし、それなら私でもできそうだからさ」

軽い口調で話すので、桜は質問をした。

「そういう仕事をしてたことがあるってこと?」

「ないよ。でもSNSはいつも使ってるから慣れてるし」

良介は眉をひそめながら質問をした。

「……他に何かないのか?」

「えー、他はない。私にはちょっと合わないし。どうせ辞めちゃうと思うからな」

広報やマーケティングの部門が中途採用で経験のない人間、しかもこう言ってはなんだが、40歳手前の人間を雇うなんてことは、めったにないだろう。そんなことすら茉莉は知らないのだろうか。