医療費だけではなかった出費
「母さん、正直に言って。これだけ頻繁に引き出してるんだから、覚えてないはずないだろ」
「……たまにパチンコに行くくらいよ」
「パチンコ?」
楓は思わず聞き返した。義母は気まずそうに、「ほんの息抜きよ」と付け加えた。
「息抜きで使う金額じゃないだろ。ほら、自分でも履歴確認してみろよ」
「これは私じゃないわよ」
「じゃあ、親父か? 何に使ったんだ?」
「別に大したことじゃない」
「だから、それが何だって聞いてるんだ」
「……競馬だよ。でも毎週やってるわけじゃない」
義父は面倒そうに答えた。
2人とも、「これくらいしか楽しみがない」「大した金額ではない」と口をそろえて言い訳した。
しかし、金額の問題ではない。楓は一気に怒りが湧き上がるのを感じた。自分たちは陽向と紬の将来を考え、外食を減らしたり、欲しいものを見送ったりすることも珍しくない。そうして家計をやりくりしながら、毎月3万円を渡してきたのだ。
「私たち、病院代が大変だって聞いてたから援助してたんですよ」
「別に、あなたたちにもらった3万円をそのままパチンコに使ったわけじゃないでしょう」
「そういう問題じゃないだろ」
佑輔の声が低くなった。楓も同じ思いだった。
毎月の援助があったからこそ、その分だけ自分たちの娯楽にお金を使えていたとも言える。
問題は義両親が経済的に困窮していることではない。自分たちの生活を見直さないまま、足りない分を息子夫婦に補わせようとしていることだった。
「私たちは、お義母さんたちが本当に困っているなら助けたいと思っています」
重苦しい空気が漂う中、楓は義母を見て、ゆっくりと言葉を続けた。
「でも、ギャンブルに使うお金を私たちが出すのは違うと思います」
