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暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2025.09.10
会員限定
暗号資産の"金商法適用"が既定路線に!有識者からは「正気の沙汰か」「ギャンブルだ」と批判も…金融審WG第2回会合で何が起きたのか

金融庁で9月2日に開かれた金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」第2回会合では、事務局の金融庁側が、現在は資金決済法で規制されている暗号資産を金融商品取引法に移行する姿勢を明確にしました。制度整備が進めば、既存の金融事業者にとっても、個人や機関投資家に暗号資産商品やサービスを提供する機会が増えることになりそうです。一方で、会合では暗号資産を普及させることに懐疑的な姿勢を取る一部委員が、「(制度整備は)正気の沙汰とは思えない」と声を上げる場面もありました。

暗号資産は現状、形式上は投資対象ではなく決済手段という位置づけで、資金決済法によって規制されています。今回、金融庁が金商法への移行の方向性を明確化したことは、注目を集めているビットコインETF解禁を視野に入れた、将来的なさらなる制度整備への布石との観測もあります。

今回の第2回会合では参加者がETFに直接言及する場面はありませんでしたが、7月31日に開かれた初会合では、オブザーバーとして参加した国際銀行協会(IBA)の代表が「既に暗号資産を組み入れ、運用会社が受託した形のETFが存在しており、その観点から、国民の中長期の資産形成に役立てるように、私たちIBAとしても今後の環境整備、それから情報の提供という面で皆様と歩んでいきたい」と発言していました。

 

金融庁側は第2回会合で、次のような方向性を提示しました。

・暗号資産の金商法への移行

・資金決済法からの除外による二重規制の回避

・ただし、決済目的での利用を制限しない

・暗号資産を2類型に分け、それぞれに情報開示規制を設ける

 

参加した有識者委員らからは、事務局提示の案におおむね賛成する意見が相次ぎました。ただ、資金決済法の規制の枠組みから暗号資産を完全に除外することの是非や、資金調達目的で発行する暗号資産について資金調達者に対する監査法人の監査等を不要とするといった方向性について、一部委員からは慎重なニュアンスの意見も示されました。

 

"ご意見番"岩下委員が吠える

WGの委員には、フィンテックに造詣が深く、ブロックチェーン技術を利用した新たな資産の普及・促進策に批判的な立場を取る論客として知られる、岩下直行委員(京都大公共政策大学院教授)も名を連ねています。

今回の会合で岩下氏は、資金調達目的で発行された主要なトークンが軒並み公募価格を下回っていると指摘した上で、「こういうものを私たちは金商法の世界に取り込もうとしているが、業界の人々が主要な事例として挙げる全てが公募価格を下回っているものを一般国民に投資の対象として勧めていくことは、私から見れば正気の沙汰とは思えない」と述べました。

 

岩下氏は暗号資産の普及促進に批判的な立場を取る理由について、以下のように述べました。

「暗号資産投資家は、セカンダリマーケットに上がる時点で売出価格から一時的にぴょんと上がったところで売れば、儲かることができる。そうしたビジネスがあったからこそ(トークンによる資金調達の形態の一つである)ICOは成立していたし、ミームコインも、本質は同じだ」

「こうした話は、2021年に注目を集めたゲームストップ事件の議論とよく似ている。この種の取引をする人々はネット上、SNSなどで集まり、”ネタ”で投資を行う。その時のノリで資金が集まって相場が変動し、利益を抜ける人は抜いていく。しかし本質は存在しないので、そのうち消えてしまう。通常の真面目な金融の他に、何か不思議な投資家たちが存在する世界が併存している。その併存する世界を、『金商法という枠に取り込んで真面目に議論しましょう』ということだが、昔から言う”ネタにマジレス”のようなものであり、いかほどの意味があるのかという感じがする」

「暗号資産がいずれは伝統的有価証券や伝統的金融のように制御可能になると錯覚しがちだが、本質的にそれは無理だと私は思う。米国や欧州の動きを見ても、目に見える範囲はある程度規制をしても、本質的なところについて私たちに出来ることは実はあまりないと思う。その意味で、伝統的金融とは異なるものとして、突き放す形での対応が必要なのではないか。その上で、公営ギャンブルのように、投資をしたい人たちには投資してもらえばよいのではないか。その上で、まっとうな人たちがそこに入らないよう、隔離のような対策をとるということが必要なのではないかと考えている」

 

業界団体、「クジラ」の取引に規制を求める

日本ブロックチェーン協会の代表者は、暗号資産の適用法令を金商法に移す方向性に賛同する考えを示した上で、利用者保護の観点から、インサイダー規制などによる市場公平性の確保などを要望。「クジラと呼ばれるような大口保有者がインサイダー的な情報を手に入れて先に取引をしてしまうことを実際に規制していただきたいと考えている。特に今回大きな論点になろうかとは思うが、資金調達型トークンと判断されたものに対してはしっかりと発行体およびそれに準ずる方々の行動について情報を開示していただきたい」と述べました。

 

また、会合では7月に暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官に就任した今泉宣親氏が、米国における制度改正の動向について説明しました。

米国では7月、暗号資産関連の主要3法案(クラリティ法、ジニアス法、反CBDC法)がいずれも下院本会議で可決され、このうちジニアス法はトランプ大統領の署名で成立。SEC(証取委)とCFTC(商品先物取引委)の棲み分けなどの論点を示した上で、「今後、こうした動きについては議会での審議を含め、金融庁としても注視していきたい」と述べました。

 

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著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
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