finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート

社保審の企業・個人年金部会、中間整理案は「両論併記」に  iDeCoのデフォルト商品や限度額見直しはどうなる

川辺 和将
川辺 和将
金融ジャーナリスト
2024.03.08
会員限定
社保審の企業・個人年金部会、中間整理案は「両論併記」に  iDeCoのデフォルト商品や限度額見直しはどうなる

厚生労働省で2月27日、社会保障審議会企業年金・個人年金部会の第32回会合が開かれ、事務局側は、私的年金制度についてのこれまでの議論を集約した中間整理案を提示しました。政府の資産所得倍増プラン、資産運用立国実現プランで盛り込まれたiDeCoや企業年金の制度見直しについては、委員からの慎重な意見を含めて紹介しつつ、最終的な結論を先送りする内容となっています。

22年の資産所得倍増プラン、23年の資産運用立国倍増プランでは、DB、DCの運用の「見える化」や高度化に向けた制度見直しの方向性が打ち出されていました。

今回の中間整理案では、昨年4月から今年2月までの議論・ヒアリングで出た意見をテーマごとに集約。このうち「見える化」については、加入者、受給権者のために行われるのであれば、受託者責任の観点から行うべきとの認識を提示しました。「事業年度ごとのDBにかかる事業および決算に関する報告書は、厚生労働省のサイトで一般に公表すべき」と前向きな意見を記載した一方、DBにおける将来給付の見える化については「コスト面など実務的な課題も踏まえて、一律的な義務づけは行うべきではない」との慎重論をあわせて紹介しています。

DBにおける運用力向上については「ルールを作りすぎると、コストや運営の手間が必要以上にかかり、逆に企業年金を辞めるという企業が出て来る可能性」もあるとの指摘を紹介しています。

また、退職時や受給時の加入者への情報提供について、4月に新設する金融経済教育推進機構を活用する案も盛り込まれました。

DCのインデックス投信デフォルト化、慎重論も

政府プランでは、DCの指定運用方法の課題にも言及し、「物価が上昇する市場環境下において元本確保型商品を指定運用方法として採用するリスクをより丁寧に説明」し、運用商品構成を見直すよう事業主に促す方向性を打ち出していました。

これについて中間整理案では、低コストのインデックス投信などをデフォルトファンドに設定することで、運用未指図のリスクを抑制できるとの賛同意見が上がった一方、「高齢期における所得の確保に関わる自主的な努力を支援することが法の趣旨」との観点から「現行制度を維持することが適切」という意見もあったと説明しています。

iDeCo限度額見直しも両論併記

iDeCoの拠出限度額については、老後の所得確保の妨げとならないよう引き上げるべきとの意見があった一方、税の公平性などの観点から慎重な検討を求める声もあったと説明し、両論併記のスタイルを取りました。

加入年齢の引き上げに関しても、これまでの議論では、国民年金の保険料の納付期間など資格要件が必要かどうかや、公平性と分かりやすさのどちらを重視すべきかなど委員の間で意見が割れており、今回の中間整理案でもそれぞれの立場を概略的に紹介するにとどめています。

政府プランでは「見える化」などの具体策について、24年末に結論を得るとのスケジュールを掲げています。中間整理案では、各テーマについて賛否両論を併記しつつ、「次期制度改正・税制改正に向け、来年度の企業年金・個人年金部会において、各論点について更に深掘りしつつ、議論を行っていく」と結び、最終的な判断を先送りしています。

ある専門家委員は、今後の議論の進め方について「本部会はあくまで企業年金や個人年金のあり方について議論するものであって、単に資産を貯蓄から投資へ振り向けるといった結論ありきの議論は行うべきではないと強調しておきたい」と要望しました。政府プランに対する受け止め方は出席委員ごとにバラツキがあり、厚労省側と政府・金融庁側との温度差をも印象づける会合となりました。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #法律・制度

おすすめの記事

「外国株式型」の純資産が3カ月連続で減少して資金流入にも陰り、パフォーマンスでは「ゴールド」(為替ヘッジあり)が好調=25年4月投信概況

finasee Pro 編集部

【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 

みさき透

大和証券の売れ筋上位のアクティブファンドは運用成績にバラつき、株価が上昇に転じた有望ファンドとは?

finasee Pro 編集部

国内投資促進の圧力が高まる?議連提言書と新資本主義会議が示した機関投資家への「期待」とは

川辺 和将

野村證券の売れ筋で「国内株」の人気は浮上、「S&P500」が急落する中で踏みとどまったファンドとは?

finasee Pro 編集部

著者情報

川辺 和将
かわべ かずまさ
金融ジャーナリスト
金融ジャーナリスト、「霞が関文学」評論家。毎日新聞社に入社後、長野支局で警察、経済、政治取材を、東京本社政治部で首相官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て2022年1月に独立し、主に金融業界の「顧客本位」定着に向けた政策動向を追いつつ官民双方の取材を続けている。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「外国株式型」の純資産が3カ月連続で減少して資金流入にも陰り、パフォーマンスでは「ゴールド」(為替ヘッジあり)が好調=25年4月投信概況
新刊『海外投資家はなぜ、日本に投資するのか』の著者に聞く、日本株のさらなる可能性
ワイズマン廣田綾子氏
【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
野村證券の売れ筋で「国内株」の人気は浮上、「S&P500」が急落する中で踏みとどまったファンドとは?
【連載】金融史観~金融史が語る資産形成の未来~
⑫振り子の金融史観(下)―分断が進む現代の先を読む―
プラチナNISAだけじゃない!「立国議連」提言書で見逃せない注目ポイント3選
「支店長! 他の金融機関と比較して、投信の取扱商品が少ないので投資の案内がしにくいです!」
「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」
日本におけるゴールベースアプローチの現状ー米国から学ぶ「顧客本位ともうかる仕組み」の両立
野村證券の売れ筋で「国内株」の人気は浮上、「S&P500」が急落する中で踏みとどまったファンドとは?
プラチナNISAだけじゃない!「立国議連」提言書で見逃せない注目ポイント3選
新刊『海外投資家はなぜ、日本に投資するのか』の著者に聞く、日本株のさらなる可能性
ワイズマン廣田綾子氏
【みさき透】視界不良の「プラチナNISA」、意外に響くネットの評判 
eスマート証券の売れ筋主要インデックスに見えた「トランプ相場」で頼りになるリスクヘッジ手段とは?
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
「外国株式型」の純資産が3カ月連続で減少して資金流入にも陰り、パフォーマンスでは「ゴールド」(為替ヘッジあり)が好調=25年4月投信概況
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド
国内投資促進の圧力が高まる?議連提言書と新資本主義会議が示した機関投資家への「期待」とは
楽天証券の売れ筋がほとんど動かなかったのは大きな変化の前兆か? 意外にもろかった「SCHD」
NISAで高齢者に毎月分配型解禁へ 制度の進化か参院選対策か、それとも「自民党・ネオ宏池会」の野望か 
【緊急座談会・みさき透とその仲間たち】
新潟との地銀越境統合は成功するか? 群馬県の金融事情【金融風土記】
プラチナNISAの創設案が映す「森信親イズム」の終焉
プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを
シニア向け「プラチナNISA」で毎月決算型も解禁? 毎月決算型の選び方と使い方
【連載】藤原延介のアセマネインサイト
⑲高齢者向けNISA創設の報道で再注目される毎月分配型ファンド
みずほ銀行の売れ筋上位が5カ月連続で同じ理由、株価の急落にもしっかり耐えるファンドとは?
【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら