足元の投信市場では引き続きインデックスファンドが隆盛だが、相場環境の変化もあり、アクティブファンドを見直す機運も高まっている。そうした中、関西みらい銀行がインデックスファンドの次のステップと位置付け、実績も上がりつつあるアクティブファンドが資産運用業界の注目を浴びている。それが、2024年12月に同行が導入した「日本高株主還元ファンド(愛称:かんげんの果実)」と「先進国高利益成長ファンド(愛称:せいちょうの実り)」である。
関西みらい銀行といえばりそなグループの一角を占め、預り資産業務での先進的な取り組みでも知られてきたが、ここ数年はポートフォリオ提案に力を注いできた。同行の常務執行役員を務める馬欠場善則氏は、「なんと言っても商品性の分かりやすさが導入の決め手になりました」と、両ファンドの採用の背景を話す。「加えて、お客さまのポートフォリオを確認しながらニーズに沿った商品をご提案するうえで、これまでのラインアップに欠けていたカテゴリーを埋め、分散効果を高めてくれる商品でもあったのです」。

ライフソリューションビジネス部担当 常務執行役員
馬欠場 善則氏
インデックスとアクティブの「良いところ取り」を実現
では、「かんげんの果実」と「せいちょうの実り」はどんな商品なのか。前者は「年1回決算型」と「年4回決算型」、後者は「年1回決算型」と「年4回決算・予想分配金提示型」のそれぞれ2コースからなるファンドであり、設定・運用はりそなアセットマネジメント。同社の執行役員である成川敏二氏は、2024年12月に両ファンドを設定した背景を次のように説明する。「新NISAの開始から1年が経過し、多くのお客さまがインデックスファンドで資産運用を始めました。とりあえずインデックスファンドで始めたお客さまの次のステージとして、お客さまが自ら商品を選択するフェーズに入ると考えたことが出発点となりました」。

成川 敏二氏
確かに、新NISAで資産運用の裾野は広がったものの、商品は一部の低コストインデックスファンドに偏り、しかも、「売れ筋だから」「SNSで勧められたから」など主体的とは言えない理由で選ばれている面もある。しかし、そんな投資初心者も経験を重ねれば、自ら選択するように変わっていくというのが同社の見立てだ。
ただし、その選択肢のうち、インデックスファンドは低コストではあるものの投資先の銘柄群をイメージしにくい。特定のセクターやテーマのインデックスに連動するファンドもあるが、こちらは市場、経済環境に左右されやすい。一方のアクティブファンドは投資先の銘柄が分かりやすい反面、コストが相対的に高くなってしまう。
これらのメリット、デメリットを踏まえていわば「良いところ取り」ができ、長期保有にも資するファンドは作れないものか。その答えとして導き出されたのが、「シンプルで分かりやすく、なおかつ長期的に持続性のある『ファクター』を用いたルールベースのアクティブファンド」。それを「相対的に低い信託報酬でお届けすることで、お客さまに新たな付加価値を提供できる」(成川氏)との理念のもと、誕生したのが「かんげんの果実」と「せいちょうの実り」だったわけだ。
工夫を凝らした動画を通じ「提案力」を強化していく
ここで成川氏の言う「ファクター」と、両ファンドが取り入れている「りそなファクター戦略」について説明しておくと、ファクターとは一般に、資産のリターンやリスクに影響を与える共通要因(サイズ、バリュー、ボラティリティなど)を指す。りそなファクター戦略では、長期にわたって優れたパフォーマンスを実現しているファクターを「メイン指標」に、それを補完する動きをするファクターを「サブ指標」に用いることで、パフォーマンスの再現性を高め、長期保有に適した商品性を生み出しているという。
例えば、「かんげんの果実」ではメイン指標に「株主還元度合い」を、サブ指標に「株主還元度合いの継続・向上等の期待度」を用いて、TOPIXの採用銘柄を絞り込む(図参照)。事実、日本の株式市場では、配当や自社株買いといった高株主還元銘柄が高いパフォーマンスを実現してきた。しかも、東証による市場再編、資本コストや株価を意識した経営実現への要請などもあり、今後も株主還元の拡大が見込まれる。そうした環境下、同ファンドは配当によるインカム収益と株価上昇によるキャピタル収益が相まって、中長期での安定的なリターンの獲得が期待できるわけだ。
一方の「せいちょうの実り」ではメイン指標に「利益成長の高さ」を、サブ指標に「利益成長の継続・向上等の期待度」が用いられ、MSCI-KOKUSAI指数の採用銘柄を絞り込んでいく。先進国の株式市場では、持続性を伴った利益成長を実現する企業が相対的に高いパフォーマンスを実現してきたが、先進国の中でも成長する国や業種、企業は変化してきた。そのため、国や業種を偏らせず、持続的に利益成長を遂げる企業を選択することで、やはり中長期での安定的なリターンが見込めるという。シミュレーションの結果でも、これらの指標で絞り込まれた銘柄群はそれぞれTOPIX、MSCI-KOKUSAIを大きく上回っている。
もっとも、商品性はシンプルでも、「ファクター戦略」という言葉に馴染みがないのも事実で、「唯一そこが懸念材料でした」と馬欠場氏も指摘する。「しかし、結果的にそれも杞憂でした。販売現場は違和感なく受け止めてくれ、むしろ仕組みさえ理解できれば、お客さまにも説明しやすいという声が多かったのです」。
このように販売現場にスムーズに受け入れられたのは、商品性もさることながら、導入時の研修などに工夫を凝らした点も大きかったという。今回の採用に当たり、実務を担当した関西みらい銀行のライフソリューションビジネス部の村井燦氏は、「研修の場では、ファクター戦略への理解を第一に考えていました」と話す。「なぜ株主還元が重要なのか、なぜ利益成長が持続する企業を選ぶべきなのかといったそれぞれのファクターの説明にも多くの時間を費やし、りそなアセットさんにも多くの支店を訪問してもらうなど、ずいぶん協力していただきました」。

村井 燦氏
また、研修用の動画にも力を入れ、ポイントをコンパクトにまとめた「商品解説動画」と、実際に販売用資料を使って顧客に提案するロールプレイング形式の動画を作成。いずれも村井氏の要望を受けてりそなアセットマネジメントが制作したものだが、その内容についても議論を重ね、さまざまなアイデアが活かされているという。「特にロープレ形式の動画については、これさえ見ればそのままお客さまに話せるような、ストーリーの組み立てを重視した実践的な内容を心掛けました」(村井氏)。
動画の大きな利点は、やはり自身の都合の良い時間に見られることで、ただでさえ忙しく、しかも入れ替わりの激しい販売現場の事情にもマッチする。「ここまで動画を活用するのは初めてで、私たちにはない発想でしたから、研修の仕組みという意味でも今回は新たな挑戦になりました」と馬欠場氏も評価する。
成川氏も、「担い手の皆さまのご負担を、なるべく軽くするサポートの在り方を模索してきたのです」と振り返る。「日々の提案活動がしやすくなるよう、支店長会議でお話しする機会をいただいたりもしました。すでにお話しした通り、『かんげんの果実』も『せいちょうの実り』も長期保有に適したファンドですから、今後の環境の変化に応じて動画もアップデートするなど、長い目線でサポートを続けていきたいと考えています」。
併せ持ちのニーズのみならず新規顧客のニーズにも合致
こうした販売会社と運用会社のパートナーシップが実を結び、両ファンドは関西みらい銀行のラインアップの柱に定着した。当初の想定通り、すでにインデックスファンドを保有している顧客がプラスアルファを求め、あるいは、すでにアクティブファンドを保有している顧客がよりコストの低い商品を求め、併せ持つ事例なども出てきている。
さらには、「NISA口座は開いていたものの、活用していなかったお客さまが、『このファンドであれば』と購入していただけるケースもかなり多い」と村井氏。「しかも、少し意外だったのが、その中に現役世代の方が少なくないことです」。
インデックスファンドとアクティブファンドの「良いところ取り」という商品性は、「コスパ」に敏感な若い世代にも響きやすいのかもしれない。事実、住宅ローンを契約している顧客に声を掛けたところ、興味を持ってくれ、最終的には夫婦そろって購入した事例などもあったという。
これまで住宅ローンの顧客は、返済が終わると取引が終わってしまいがちだった。しかし、資産運用でも接点が持て、それが長く保有できる商品であれば、長期の関係性が築きやすくなるのは間違いない。住宅ローンから資産運用へ、そしてその先の相続や信託関連業務、さらには次世代の取引へとつなげていく。それが現在、関西みらい銀行が目指している総合コンサルティングの姿でもあり、その中で「かんげんの果実」と「せいちょうの実り」が果たす役割は大きい。
「いくら新NISAがこれだけ浸透し、資産運用への関心が高まっても、第一歩をなかなか踏み出せないという方はまだ多くいらっしゃいます。そうした方たちに対面でアドバイスを提供し、後押しできるのが私たち地域金融機関の強みであり、使命だとも捉えています。これからも資産運用の重要性を、地域のお客さまにしっかりお伝えしていきたいですね」(馬欠場氏)。
「かんげんの果実」と「せいちょうの実り」は、そうした顧客の入り口商品になり得、もちろん、ポートフォリオ提案のツールにも適したファンドでもある。その強みが関西みらい銀行で日々実証されているだけに、「今後も皆さまの声に耳を傾けつつ、長期で着実に残高を積み上げていけるようなファンドに育てていきたい」と成川氏は意気込む。りそなアセットマネジメントでは、ファクター戦略を取り入れたファンドをさらに追加していく構想もあるそうで、新たなカテゴリーであるだけに、今後の展開にも注目したい。
※記載されている数字、内容は「Ma-Do」Vol.77掲載時(2025年2月)のものとなります。
りそなアセットマネジメント
金融商品取引業者登録番号 関東財務局長(金商)第2858号
設立年月日 2015年8月3日
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
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