再発防止策と社内調査の実効性に疑念
事業者に行政処分を発出する際、金融庁はその処分の理由を公表します。たいていの場合、事案の事実関係について説明した上で、その背景にある態勢不備や組織風土に関する問題点を指摘するという流れが一般的です。
今回のプルデンシャル生命に対する処分についても、不適切な金銭授受や違法な保険募集など、調査で事実認定した範囲を明確化した上で、支社任せ、現場任せとなっていた態勢不備について指摘しています。
しかしその上で、事実関係と態勢不備に劣らず紙幅を割いているのが、同社における問題発覚後の対応の不備についてです。発覚後の調査の進め方や、再発防止に向けた取り組みといった対応の実効性についても、次のように厳しく批判しています。
・多数のLPによる金銭不祥事の発覚を踏まえた営業自粛期間においても、LPの行動把握・管理を実質的に行っておらず、自粛期間中の措置に反して営業管理職の承認を得ないままLPが顧客と接触している事案が生じているなど、業務執行部門に対する経営陣の管理・監督は実効性を欠いたものとなっている。
・金銭不祥事の防止に向けた発生原因分析や再発防止策の策定・実行に関して、施策の有効性・十分性を検証するための態勢を構築しておらず、金銭に執着の強い人材の排除や投資勧誘禁止ルールの徹底に向けた措置を検討していない。
加えて、再発防止の取り組みの前提となる社内調査の進め方についても、次のような問題があったとしています。
・コンプライアンス違反の疑義がある苦情であっても、件数・割合などの表層的な分析にとどまり、苦情が生じることとなった原因の分析や再発防止策を検討していない。このため、金銭詐取の疑義があるとして当社が潜在調査の対象としたLPについて、調査以前から多数の苦情が寄せられていたことが事後的に判明している。
・退職したLPによる個人情報の不正持出し事案を受け、類似案件の調査を行っているものの、調査対象・範囲が限定されているうえ、個人情報の持出有無を確認していないなど調査の実効性が確保されていない。その結果、追加調査により、新たに多数の個人情報の持出し疑義が確認されている。
処分公表の前日にはプルデンシャル生命側が記者会見を開き、固定給の導入など新たな再発防止策を発表していました。これについて金融庁幹部は、「それをやれば報酬制度(の問題)が解決するとは我々は当然考えていない」と説明。「何もしなくても皆が35万円をもらえるわけではなく、35万円を得るために必要なノルマや目標を設定せざるを得ないかと思う。それを設定した場合にまた新たな問題が生じないかといった、色々な観点で総合的に改善策を考えてもらいたい。その意味で、昨日の発表だけでは当然、十分ではない」と指摘しました。
このように、仮に問題を認めたとしても表層的な調査に基づく形式的な再発防止策にとどまるのであれば、容赦なく行政処分に踏み切る考えを改めて打ち出した格好です。
“入れ子構造”の責任転嫁と内部監査への無理解
また、金融庁が行政処分に踏み切った背景には、不祥事案の責任の所在が「自主性」や「独立性」といった表面的理念を隠れ蓑として、親会社から子会社へ、本社から支社へ、責任者から現場へと転嫁されていたことへの問題意識があります。
親会社側に対しては「グループ子会社の自主性や独立性を過度に尊重していた」ことにより、「子会社の業務執行に関する情報を適時に把握せず、深度をもった検証を実施していなかった」ため、「管理・監督の機能不全」に陥っていたと指摘しています。
プルデンシャル生命については、全国の支社ごとにLPの採用を行う支社運営制度の下、「支社長を頂点とする各支社は、LP数の増加と相まって、当社内における存在感と自主独立性を強めていった」と指摘。金銭に執着の強い人材が“混入”しやすいビジネスモデルに固執する経営陣の姿勢が、LPや支社をはじめとする営業第一線に対し、「本社・本部が『物が言えない』、『支社任せ』の企業風土・文化を助長していった」との認識を示しています。
加えて、経営陣においては「内部監査の役割・重要性を否定するような言動」が認められたとしています。これについて金融庁幹部は「内部監査が監査を行い、指摘事項があるといったのに対して、監査を受けた被監査部署の方が『まあやりますよ』と言えば、(経営陣側に)『被監査部署がやると言ってるんだから、指摘しなくてもいいじゃないか』といった趣旨の発言があった」と説明。その上で、「内部監査は指摘するだけが機能ではなく、当然に指摘した事項について、しっかりその改善を立てさせ、定着までフォローアップするアシュアランス機能が重要な役割だ。指摘をしない以上、フォローアップのしようがないので、そもそも内部監査の意味を理解していないのではないか。経営陣として、ここはしっかり反省すべきではないか」と述べました。
金融庁は「反省」踏まえ体制を強化
プルデンシャル生命をめぐっては既に金融庁が昨年、一連の問題に関して保険業法に基づく報告徴求命令を出していました。
金融庁幹部は「これまで監督上の対応として届出や報告徴求、ヒアリングなどさまざまな手法をやってきた。その中でもプルデンシャル・ジブラルタにおいて多くの金銭詐取が行われてきたことは、我々、当然反省すべき点があったと考えている」と発言。反省すべき点を踏まえ、保険募集監督室の設置など体制を強化したと説明した上で、「監督室を作って十分ということではなく、保険監督のあり方についてより実効性を高め、機動的な見直し・検討をしていかなければいけないと思っている」と話しました。
