「現実世界のAI」が注目を集める3つの理由
株式投資の世界では足元、“魅力”と“難しさ”が混在している。
相場は短期的な上下を繰り返しつつもおおむね好調で、ここ数年はS&P500など国内外の主だった株価指数が相次いで過去最高値を記録している。けん引役となっているのは、米国の巨大IT企業を含むAI関連銘柄だ。「今の株価はさすがに高すぎではないか」と警戒する向きもあるが、時代の流れを見間違えればチャンスを取り逃がす可能性もある。
AIの本格的な価値創出を収益機会としてしっかり取り込みつつ、成長が期待される銘柄を見極める方法はあるか――時代は今、“賢いAI投資”を求めている。
「中長期的な目線で株式投資の今後を展望する際、キーワードの一つとして大きく注目されているのが、 “フィジカルAI”です」。そう語るのは、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社 執行役員 投資信託ビジネス共同統括・川邊美羽氏だ。
フィジカルAIとは、AIをデジタル空間にとどまらず現実世界の機械やネットワーク、プラットフォームなどに実装させ、自律的に状況を感知・判断し、行動させる技術や仕組みを指す。SF作品で描かれるようなAIロボットのイメージが強いかもしれないが、いわゆるヒューマノイドや産業用ロボットだけでなく、物流・交通インフラ、自動運転、金融、医療など、現実世界のさまざまな領域でAI活用の拡大が見込まれている。川邊氏によるとフィジカルAIは一過性のブームではなく、社会構造や個々の企業活動に「長期的かつダイナミックな変革」をもたらしえるという。
■フィジカルAIとは
今、フィジカルAIが注目を集めている背景には、3つの要因があると川邊氏は分析する。
「第一に、生成AIなどの技術革新により、高度な判断を行うのに必要な『頭脳』が大きく進歩したこと。第二に、センサーや通信など『身体』や『感覚器官』にあたるハードウェア面・インフラ面も進化し、AIを現実世界で活用する環境が整いつつあること。そして第三に、労働力不足や高齢化、物流・製造現場の効率化など社会課題の解決手段としてAI実装への期待が高まっていることです」
フィジカルAIは世界的な潮流だが、日本でも高市政権が成長戦略として重視する戦略17分野の1つに指定したことで、本格的な社会実装への期待感がいっそう高まっている。2026年は「フィジカルAI元年」とも表現され、新しい時代の波を捉え、息長く収益力に結びつける企業を見極める“目利き力”が問われる局面と言える。
「AI=ソフトウェア」の常識を超える
AIの現実世界における活用領域拡大により成長が期待できる企業の株式に、プロフェッショナルの視点で選定して投資するのが、大和アセットマネジメントが設定・運用する「モルガン・スタンレー フィジカルAI株式ファンド」だ。
本ファンドは、米モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント(以下、MSIM)が実質的に運用を手掛け、NISA成長投資枠の対象商品となっている。26年4月の運用開始から4カ月程で純資産総額が2,000億円を突破し、早くも投資家から強い支持を集めていることがうかがえる。
「ロボットや半導体といった分野はもちろんのこと、AIの実装・活用を支えるプラットフォーム企業、そして実際にAIを活用して事業を進化させる企業まで、幅広い領域を投資対象とするのが当フィジカルAI戦略の特徴です。更に、ベンチマークや特定の指数からのスクリーニングではなく、ボトムアップ・リサーチの銘柄選択を基本とし、フィジカルAI関連のビジネス・エクスポージャー、成長ポテンシャル、財務健全性、競争優位性などを備えたユニークな企業でポートフォリオを構築することを目指しています」と川邊氏は語る。26年6月末時点の組み入れ上位10銘柄を見ると、AI投資の“定番”であるソフトウェア関連を組み込みつつ、運輸、自動車、医薬品、金融、建材流通など幅広い領域に分散投資されていることが分かる。
■組み入れ上位10銘柄の概要(2026年6月末時点)
巨大IT銘柄の中には、短期的に株価が激しく変動する動きもみられる。AI投資というと、やはり気になるのは足元の“過熱感”かもしれない。
この点について川邊氏は、「たしかにAI関連株式には既に高い期待が織り込まれている分野もあり、短期的な株価変動には注意が必要です。一方で、AIの本格的な価値はこれから現実世界の産業や社会インフラにその活用領域が広がっていく過程で生まれると考えています」と強調。その上で、「過去の技術革新を見ても、新たな市場を開拓する企業が長期にわたり高い成長を実現してきました。四半期決算や短期的な株価の動きではなく、企業が持続的な競争優位性を有しているかを見極め、5年、10年といった時間軸で成長が期待できる企業に投資することを当戦略では重視しています」と補足した。
実質的な運用を担当するMSIMのカウンターポイント・グローバル株式運用チームは、1998年以来、大型株から小型株、上場企業から未上場企業まで、幅広い企業を一貫した哲学とプロセスで調査・運用してきた実績がある。技術・ビジネスモデルの変化に対し横断的にアプローチする高度な知見を蓄積してきたプロフェッショナル集団が、情報技術セクターや大型半導体関連銘柄に偏らないポートフォリオ構築を目指す。
株式市場への期待と過熱感が同時に意識されるこの時代に、「モルガン・スタンレー フィジカルAI株式ファンド」は何を目指すのか――インタビューの最後に、川邊氏はこう力強く語った。
「AIは今、デジタル空間での進化にとどまらず、私たちの暮らしや産業が行われる現実世界へとその舞台を移しつつあります。フィジカルAIは短期的な流行ではなく、社会構造を根本からアップデートしていく巨大な潮流です。これからも、当戦略ではAIの現実世界への実装から持続的な恩恵を受けると考えられるユニークな企業を厳選することで、新たな時代を見据え、長期的な社会変化と成長機会を捉える運用を目指してまいります」
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