今回は愛知県にお住まいの専業主婦、沢田陽子さん(52)の例を紹介します。

相談者: 沢田 陽子さん(52) 専業主婦
ご家族: 夫  紀夫さん(52) 長女 果帆さん(26) 次女 史帆さん(23) (いずれも仮名)

老後資産としては十分なのに、リスクを取って運用する理由

沢田さんは、5年ほど前に亡きお母様から約9000万円の資産を相続したのを機に、資産運用を始めました。地元の地銀で毎月分配型投信を、対面型証券でテーマ型投信と仕組債、さらにネット証券でも口座を開設し、ご自身で個別株を売買していました。

これらの運用では、利益が出ることもあれば損失が出ることもあり、結局トータルでは成果が上がっていませんでした。自分で手がけている個別株はともかく、金融機関のアドバイスで購入した商品の運用成果が低迷していることには納得がいかないようです。彼女の友人が私の顧客だったため、「五十嵐さんに相談してみたら?」と勧められ、紹介でいらっしゃいました。

初回の面談では、まずはご本人の希望と運用の目的を引き出すことに努めました。というのも、これまでの運用成果に対する不満はともかくとして、9000万円もの資産があるなら、あえてリスクを取った運用をしなくても、計画的に取り崩していけば多くの人が心配する老後資金としてはまったく問題ないからです。

始めのうちは、返ってくる答えも「なんとなく……」など、ご自身でも目的がよく分からない様子でしたが、詳しく聞いていくと2人の娘さんに資産を残したいという希望があることがわかりました。また、ご自身がお母様の資産を相続する際、取引金融機関が多過ぎて苦労した経験があることから、なるべく娘たちには同じような手間をかけさせないよう、資産の残し方もシンプルなかたちにしたいということでした。