「老後2000万円問題」やNISA制度の拡充等をきっかけに、老後資金準備への関心は国内で高まっています。しかし、まさに今はデフレからインフレへの過渡期。資金を蓄えていても、実質的に目減りしてしまう可能性もあるのです。

話題の書籍『老後が不安……。貯金と年金で大丈夫ですか?』では、現金を貯めても実質的に目減りする“インフレの怖さ”や、老後資金の不安を解消する方法について、齋藤岳志氏が会話形式で優しく解説。今回は本書の第1章「老後が心配なので、貯金をしていますがいろいろ不安です」の一部を特別に公開します。(全3回)

※本稿は、齋藤岳志著『老後が不安……。貯金と年金で大丈夫ですか?』(現代書林)の一部を再編集したものです。

老後資金が不安で相談に来た「夫婦の現状」

齋藤岳志(以下、CFP):CFP(Certified Financial Planner)
鴨下芳江(妻・以下、芳江):専業主婦 60歳
鴨下光男(夫・以下、光男):会社員 59歳

〈光男・芳江夫婦の経済状況〉
・2人暮らし(長男・次男は社会人・独立)
・光男は60歳で定年だが、その後も65歳まで継続雇用予定
・芳江は長年パート勤務を続けてきたが、現在は専業主婦
・自宅は横浜市内の持ち家(ローン完済)
・借金ナシ
・預貯金2000万
・光男の退職金は1000万円(予定)

夫婦:はじめまして!

CFP:はじめまして。このたびはよろしくお願いします。早速相談をお伺いしましょう。

光男:はい。ズバリ、老後資金についてです。私はずっと会社員で働いてきて、年収は現在でも600万円とあまり高くないのですが、なんとか2人の子どもを大学まで出して、住宅ローンも完済し、できる範囲で貯金もしてきました。

でも私が来月60歳で定年になるんです。65歳までは継続雇用で同じ会社で働けるのですが、給料は40%下がって、年収は360万円になってしまいます。退職金は入りますが、この先この資金で持つのか、心配になって相談に来ました。コツコツ貯金はしてきたけど、いろいろ不安で……。

どのぐらいの資金が必要?

CFP:状況はわかりました。まず、お二人が今後どのぐらいのお金が必要なのか30年後、40年先を考えて計算していきましょう。

光男:30年というと僕たち90歳、40年で100歳か、ま、100歳までは無理として、30年先まで考えればいいか……。

芳江:あら、私は100まで生きるつもりよ。

CFP:人生100年時代です。ぜひその心意気でお願いします。

光男:私はそんな元気がなく……(笑)。でもまあ妻のほうは100歳いけそうですし、40年後までお願いします。

CFP:まず現在の貯金額が2000万円。これに光男さんの退職金が1000万円ですから、合計で3000万円。まずはこれが手持ちの資金となりますね。現在のお二人の毎月の生活費はどのぐらいですか?

芳江:37万円ぐらいです。2人にしては多めだと思うし、もう少し節約したいのですが、親の介護をしていて費用の一部を負担しているし、特に贅沢をしていなくても、このぐらいはかかってしまうんです。光男さんは糖尿持ちで食事を気にしないといけないのによく食べるし、お酒もたくさん飲むし。

CFP:まあ、夫婦2人で37万円は一般的な家計よりは少々多いかもしれませんが、引退後は現役時代より生活費が少なくて済むのが一般的です。大体7〜8割ぐらいにはなります。お二人の場合、37万円×0.8で約30万円としましょう。