デフレが終焉しインフレに突入――世界各国の経済が転換を迎えている今、“銀行預金だけ”を持つ危険性が語られています。ただ、適切にリスクを分散させた資産運用をすれば、インフレ下にあっても自分・家族の生活や資産を守ることはできると日銀出身の政策アナリスト・池田健三郎氏は説きます。
話題の書籍『「新しい資本主義」の教科書』では、日本や世界を取り巻く状況から、投資をはじめとする資産運用の意味について分かりやすく解説しています。今回は本書の『はじめに』、第1章『「5年後の世界経済」を予測したうえで投資を!』の一部を特別に公開します。(全4回)
※本稿は、池田健三郎著『「新しい資本主義」の教科書』(日東書院本社)の一部を再編集したものです。
インフレの感覚を忘れかけた私たち
大変な世の中になりました。長らくデフレが続いていると思っていたら、いつの間にかインフレが襲来し、所得が必ずしも十分に増えない中で身近な商品・サービスが次々に値上がりしています。
世界に目を向ければ、日本のみならず欧米も、長らく不景気で金融緩和が続いていましたが、日本よりも早くインフレ基調に変わり、緩和から引き締めに転じています。それに伴い、金融緩和期に運用難からリスクを取りすぎた反動で、金利上昇局面での信用不安が台頭し、米国では銀行の破綻が相次いでいます。
そもそも、日本国民の中で戦後のインフレやバブル景気の実感や実体験を持っている人は、今や昭和生まれの一部に過ぎません。その人たちも記憶が薄れ、過去の教訓を生かす場面は少ないでしょう。
他方で多くの人は「インフレってどのようなもの?」という状況にあり、戸惑いを感じている人も少なくありません。とくに若い世代は、生まれてからずっと物価や賃金が上昇しない世界で生きていますから、インフレの感覚を持たないのも当然です。