今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は公的年金・私的年金等の受取方法および税制などの「出口戦略」について解説した谷内陽一氏の『WPP シン・年金受給戦略』の第1章を特別に公開します(全3回/本記事は第1回)。著者本人が同書を解説する無料セミナー情報も!

※本記事は谷内陽一著『WPP シン・年金受給戦略』(中央経済社)から一部を抜粋・再編集したものです。

なぜ「老後」に不安を感じるのか

老後生活や公的年金制度について新聞・雑誌・テレビ等のマスメディアが取り上げる際は、たいてい「公的年金はいずれ破綻する」「でも資産運用は難しい」「そもそも貯蓄する余裕なんてない」など、悲観的に報じられるのが世の常です。

しかし、老後の不安は今に始まった話ではなく、実は数十年も前からずっと言われてきました。金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」や生命保険文化センター「生活保障に関する調査」によると、「老後の生活が心配である」あるいは「老後に不安を感じる」と回答した人の割合は、一貫して80%前後の水準で推移しています(図表1-1)。

それにしても、人間はなぜ「老後」にかくも不安を感じるのでしょうか。その理由には次の3点があります。

・誰も経験したことがない
・マスメディア・専門家は悪いニュースしか取り上げない
・年金をめぐる社会・経済環境が大きく変わった

(1)誰も経験したことがない

老後に限った話ではありませんが、未経験のことに不安を感じるのは人間ならごく当たり前の現象です。これは、人類の進化の過程において、危険をすばやく察知して逃れるために身に付けた本能です。ましてや老後は、一生に一度きり、それも人生の終盤でしか経験できないため、野球やゴルフのように「本番前に何度も練習して試行錯誤を重ねる」ことはできません。

また、人間は不平・不満がある時は声を大にして主張するものの、「満足している」あるいは「それなりに上手くいっている」ときは、わざわざ声を上げたりしないものです。そのため、老後や老後生活にまつわる言説は、結果として不安論や悲観論ばかりが世の中に溢れることとなります。