企業型DCの加入者だった人が2022年5月以降iDeCoに加入すると、企業型DCの資産をiDeCoの口座に持ち込むことができるようになり、これにより60歳以降の運用・受け取り方のバリエーションが拡がることになります。今回は、どんな選択肢ができて、それを利用するとよい人はどんな人なのか、解説します。
「企業型DCの資産をiDeCoに移して受け取る」という新たな選択肢が登場
企業型DCの加入資格は、原則は60歳までですが、労使合意によって60歳以上に引き上げることが認められています。60歳以上に引き上げている会社は2021年3月末時点で1万社を超えてきていますが、それでも企業型DCを導入している会社の4社に1社程度です。企業型DC加入者は60歳の定年までは会社から掛け金を出してもらえる加入者という立場ですが、加入者の多くは60歳になると加入者資格がなくなるということです。そして残高の運用指図だけを行う運用指図者になり、それと同時にこれまで運用してきた資産を受け取る権利(=受給権)を獲得することになります。
従来であれば、60歳時点での選択肢は、60歳ですぐに受け取り始めるか、もう少し運用を続けて受け取りを先延ばしするかというタイミングの選択を行い、受け取る場合には企業型DCで用意されている年金・一時金・またはそれらを組み合わせる併給といった受け取りパターンの中から選択を行う、という企業型DCの中で完結するものだけでした。
ところが来年5月以降に、iDeCoに60歳以降加入しているとすると、そちらに企業型DCの資産を移してiDeCoからまとめて受け取るという選択肢が加わることになります。