今年6月5日、金融商品の販売等に関する法律等を一部改正する「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、「金融サービス仲介業」という新しい金融業態が新設された。この新しい業態は、従来の法規制では想定されていないような機能横断的なものであるという点で、画期的なものであると考えられる。

ここに至るまでに、2017年秋から開始された金融庁の金融審議会「金融制度スタディ・グループ」及び「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」において、機能別・横断的な金融制度の整備等、足もとの環境変化を踏まえた金融規制のあり方についての議論が活発に進められてきたが、従来の証券・保険・銀行といった業態別の法規制の垣根を超えた新たな業態として結実したことは、金融業界にとって重要な一歩であり、リテール金融業界の新時代を象徴するものであるようにも感じられる。

「金融商品仲介」スキームの拡がりと課題

これまでの「金融商品仲介業」は、証券分野における業態のひとつとして、IFA(独立系金融アドバイザー)のように個人向けに株式や投資信託等の金融商品の提案や販売を担う存在であり、2004年の証券仲介業制度の創設以降、少しずつではあるが、その存在感を大きくしてきている。

金融商品の販売を担うものの、金融商品仲介業者が全ての販売機能やシステム等を自前で具備する必要はなく、所属する証券会社等の金融事業インフラを利用しながら、軽く事業を営むことができるため、特にここ最近は、リテール金融事業の領域において金融商品仲介スキームの活用が改めて見直される機運が高まっている。例えば、昨年夏に発表され、金融業界に衝撃を与えた野村證券と山陰合同銀行グループの包括的業務提携も、金融商品仲介スキームを用いている。

一方、この金融商品仲介スキームは、元々が証券仲介業に端を発していることや、個人顧客の利益保護という視点が重要視されてきたこと等もあり、その使い勝手の悪さが課題として指摘されてきているのも事実である。

例えば、個人向けの金融サービスといえば、証券関連の商品のみならず、住宅ローン等の銀行商品や保険商品等も重要なサービスである。顧客の長期的なマネープランを支援するためにはそれらを総合的に利用することが必要となるが、金融商品仲介業者がそうした銀行・保険商品を取り扱う場合には、銀行代理業や保険募集人のライセンスが別に求められる。

また、小規模な金融商品仲介業者が顧客に事故で損害を与えた場合等に備え、現行の金融商品仲介制度では、所属する証券会社等が金融商品仲介業者のコンプライアンス指導や損害賠償責任等を担うという「所属制」が定められているが、これも顧客の利便性を追求し、複数の証券会社等に所属を増やそうとした場合に、それら全ての所属金融機関からの指導に対応しなければならないという煩雑さが指摘されている。

オンラインでの金融商品・サービスの提供等、金融機関と顧客のあり方が多様化する中、金融商品仲介スキームの使い勝手の悪さが、結果的に顧客の利便性を損なうことにもなりかねないのである。