ピムコジャパンリミテッド
エグゼクティブ・バイス・プレジデント
覚知 禎 氏

――2023年度のグローバルな経済・マーケットについて振り返ってください。

欧州諸国やカナダ、オーストラリアなど経済活動がスローダウンした国もありますが、グローバル経済としては市場の想定よりもかなり堅調だったと思います。かつて低位にとどまっていた各国の政策金利が2022年度に急上昇したことを受け、23年度からは少しずつ景気後退へと向かうとの見通しが大多数だったと思いますが、一定の経済活動がキープされた印象です。

背景としては、グローバル全体で需要の根強い状況が続いていた点が挙げられるかと思います。例えば米国では、新型コロナ対策の現金給付により家計に蓄えられていた「強制貯蓄」が、消費を下支えしました。また米国経済のストラクチャーの特徴として、金利上昇の影響が家計や企業に及ぶまで時間がかかるようになっているため、政策金利の引き上げが企業や家計の経済活動に直撃しなかったのもプラス要因となりました。

さらに、インフレ率の上昇が鈍化して金利引き下げへと意識が向かう中、投資マネーがリスク資産に集まり、米国を中心に株高となったことも家計の消費を促しました。欧米諸国、とりわけ米国は家計の保有しているリスク資産が日本に比べて圧倒的に多いので、株式市場の高騰が消費を刺激して経済が回る「資産効果」が引き起こされたと推察できます。

――堅調な経済は今後も続くのでしょうか。2024年度の経済・マーケット展望をお聞かせください。

2023年の堅調度合いが24年も続くとは考えにくいでしょう。米国を中心に、リセッションとは言わないまでも、スローダウンしていくことをメインシナリオと考えています。

スローダウンを予測する理由としては、堅調なグローバル経済を支えてきた追い風要因が徐々に失われつつあることが挙げられます。例えば米国の強制貯蓄はすでに枯渇間近の状況ですし、資産効果の要因となっていたインフレの鈍化もこれ以上は見込みづらくなってきました。FRBが利下げ開始の目標としているインフレ率2%への低下にもしばらく時間かかりそうです。

ただ当然ながら、メインシナリオのみならずリスクシナリオをしっかり考えておくのも大切です。実際、23年を振り返っても当初の市場予想とは乖離した結果でした。