ここ数年、現役世代向けの資産形成に関する情報は新聞、雑誌、ネット、YouTubeなどで発信されており、すでにかなりの情報量になっていると思います(クオリティについてはピンキリ!?)。もはや情報があふれすぎている感すらあるかもしれません。内容を見ても多くの人が同じようなことを言っていて、個人的には資産運用については議論がされ尽くしているように感じます。

ありがたいことに、資産形成を実践する際に利用可能な非課税制度(NISAやiDeCo)はすでに存在しており、これらは広く普及しています。またNISAについては2024年から非課税枠が大きく増えるため、もうお膳立てはかなり整っていると思います。あとは「やるか、やらないか」だけなのです。

一方、まだ十分な議論がされておらず、改善の余地があるのが、投資の“やめ方”です。ここでの“やめ方”とは単に投資したものを売却することではなく、現役時代に積み上げた資産を老後にどのように引き出して使っていくかを意味しています。識者も含めて多くの人のアドバイスにおいては、資産を積み上げることがゴールであるかのようなメッセージが多いようですが、資産を貯めるのは通過点にすぎません。そのお金を使って老後の生活を支えてこそ、意味があるのです。

そこで今回は、この投資の“やめ方“について議論したいと思います。

投資の“やめ方”、資金の引き出し方にはどんなものがある?

老後にどうお金を使っていくのかについては、米国では「4%ルール」という考え方が広まっています。これは、それまで形成してきた資産の4%相当額を毎年引き出すというルールのこと。例えば定年退職時の資産が3000万円だったとしたら、3000万円×4%=120万円、つまり毎月10万円引き出すというルールです。今後、資産運用をしない前提であれば、25年間にわたって10万円を毎月引き出すことができるわけです。

しかし、このルールについては米国でも議論があります。保有資産額や必要額は個人ごとに異なるため、誰に対しても4%の引き出し額が適切とは限らないでしょう。また先ほどは運用しない前提で「10万円を25年間」と計算しましたが、運用する前提ならば、もっと多くの金額を長い期間にわたって引き出せるかもしれません。保有資産額や運用の仕方によって最適な引き出し額は変わってくるため、誰でも4%というわけではないのです。

さらに実際に引き出す際には、これまでの議論では毎月一定の額を引き出すのが一般的で、これを「定額解約」と言いますが、それ以外にも今の保有資産の何%と決めて引き出す「定率解約」というやり方もあります。投資信託の場合であれば、一定の口数ずつ解約する「定口数解約」もあります。

もちろん、それぞれメリットとデメリットがありますが、今回の焦点はそこではないため、簡単に説明します。ざっくり言うと「定額解約」では、毎月引き出し額が変わらずに安定した生活ができますが、その分、市場変動が大きくなると想定よりも早く資産がなくなってしまう可能性があります。逆に「定率解約」では資産運用にネガティブなインパクトを与えないように引き出すため、資産は長持ちするものの、毎月の引き出し額が変動するため生活費が安定しないというデメリットがあります。「定口数解約」はあらかじめ期間を決めて払い出しができるメリットがありますが、「定率解約」と同様、毎月の引き出し額が変動するというデメリットもあります。

これら定期解約サービスを提供している金融機関もありますが、まだ限定的であるため、あまり普及していません。だからといって、定期解約を自分自身で行うのも非常に手間がかかります。