マンション建て替えに必要な決議

報道によると、TOYO TIREは不正な免震ゴムを納入した福岡の賃貸マンション1棟を2021年に取得し、解体を進めるようです。当該マンションは全室が賃貸のようで、入居者は借地借家法に基づいて退去が求められると考えられます。

では分譲マンションの建て替えはどのように行われるのでしょうか。複数のオーナーが区分所有するため、誰かの一存で断行するわけにはいきません。かといって、区分所有者の全員の賛成を待っていては建て替えが進まず、安全性が懸念されるマンションなどが放置されるケースが懸念されます。

そこで、分譲マンションといった区分所有建築物は「建て替え決議」が採られれば建て替えが可能だと認められています。これは、原則として区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成があればマンションの建て替えができる仕組みのことです。

【区分所有法第62条「建替え決議」(一部抜粋)】
集会においては、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議……をすることができる。

出所:e-Gov法令検索 区分所有法

建て替え決議を採るための集会は少なくとも2カ月前には開催が通知される必要があり、集会の1カ月前までには事前説明会を行わなければならないと定められています。また建て替え決議の採決後は、当該建て替えの賛成者は対価を支払うことで反対者にその権利を譲り渡すよう請求することが可能です。

この仕組みにより、分譲マンションといった区分所有建築物の建て替えが突然決定される事態が回避できるほか、反対者の権利も保護しつつ建て替えを円滑に進めることが期待されます。

このように、分譲マンションの建て替えは民主的なプロセスを経て実施されます。マンションの購入を自宅用や投資用に検討している人は、頭に入れておいた方がよいかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。