コメ先物が廃止…なぜ?

米を巡っては、近年はコメ先物が廃止されたことが話題を集めました。

先物取引は、将来の受け渡しを約束し、現時点で取引を成立させる取引のことです。農家がコメ先物を活用すれば米が値崩れするリスクを投資家に転嫁できるため、保険のような使い方が期待されていました。

国内では堂島商品取引所がコメ先物を取り扱っていましたが、上場は試験的なもので、本上場には農林水産省の認可が必要でした。しかし、農林水産省は取引参加者が増えていないことなどを理由に本上場を認めず、江戸時代から続いたコメ先物は2022年6月に国内から姿を消します。

取引参加者が増えなかった理由として、「米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)」があると考えられます。米などを育てる農家の収入が一定以下に減少した場合に、その補填を行う制度です。つまり、農家には既に保険的な仕組みが整備されており、コメ先物に対するニーズが高まらなかったのでしょう。

また米の流通の大半を握る農協が取引に参加しなかったことも、コメ先物が広がらなかった原因の1つでした。その理由として、農協が米価格を支配できなくなることを懸念したことがよく指摘されています。コメ先物の価格は投資家同士で決められるため、農協は関与できません。それが現物の米にも影響すれば、農協は価格を調整できなくなるでしょう。

いずれにせよ、コメ先物を扱う国内取引所はなくなりました。しかし、コメ先物の仕組み自体は合理的で、農家にとってメリットもあります。今後は、米に対する支援が縮小されるか、あるいは農協の米に対する支配が弱まれば、また復活することもあるかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。