――NISA改革の今後の課題は。

一連の折衝で唯一実現できなかったのが、ジュニアNISAの事実上の継続です。そもそも現行でも年110万円まで生前贈与を認めているわけですから、子や孫に向けた資産形成をNISAで行うというのは至って自然な発想です。しかしながら18歳未満の本人に代わって投資できることへの抵抗が大きかったのだろうと思います。もし将来、実現の機運が高まるとすれば、未成年者への金融教育の充実が前提となります。今回の税制大綱でも金融リテラシー向上のための中立的な機関をつくると盛り込まれました。おそらく法案の形にまとまるでしょう。社会人だけでなく中高生のリテラシーが上がってくれば、18歳未満のNISAについても再び議論が盛り上がってくるとみています。

――新NISAによって日本の経済・金融はどのように活気づいていくでしょうか。

さっそく2023年に起きそうなのが、現行NISAの駆け込み需要です。1800万円の生涯投資枠は24年1月からの新制度に適用されるため、23年12月までに「一般NISA」や「つみたてNISA」に投資した分は生涯投資枠に計上されません。今のうちにNISAを始めれば事実上、生涯投資枠が1800万円を超えます。金融機関はこのあたりの仕組みを宣伝し、24年にスタートする新制度への弾みにしていただければと思います。

新NISAによって日本でも「貯蓄から投資」が進んできたとの実感が広がれば、海外の資産運用会社が日本に参入してくるでしょう。日本の膨大な個人資産の山が動く好機を見逃すはずがありません。日本の国際金融センター化にも貢献するでしょう。私は菅義偉内閣で財務副大臣を務めていた際、国際金融人材を日本に受け入れるための規制緩和やインフラ整備に取り組みました。ただ、足りなかったのは「お金のにおい」でした。個人による投資が増えて国内市場が盛り上がってくれば、「所得税が高い」などという理由で日本市場を敬遠してきた海外投資家も日本に注目せざるを得ません。デフレと超円高からは脱却しました。新NISAを日本市場のマインドセットを変える起爆剤にしていきます。