日本のお家芸「ディスプレー」が衰退した理由

近年、ディスプレー市場における日本のシェアは低下の一途をたどっています。生産額ベースでいうと、2010年はまだ約2割のシェアを持っていましたが、市場規模の成長についていくことができず、2021年では6%台にまで低下しました。

【ディスプレーデバイスの生産額と日系企業のシェア】

電子情報技術産業協会「電子情報産業の世界生産見通し」および日本銀行「時系列統計データ検索サイト」より著者作成

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日本はもともとテレビや映像再生機器といったAV機器市場では高いシェアを握っていました。現在も世界生産の約2割は日系企業が担っているとみられており、決してシェアが低いわけではありません。

しかし世界のニーズは、従来のAV機器からタブレットやスマートフォンといった次世代の通信機器へ移っていきます。日本の電機メーカーも参入しますが、海外勢との競争が激しく、うまくシェアを伸ばすことができませんでした。携帯電話に至っては、国内においてもアップルに市場の4割以上を握られています。

【最もよく利用する携帯電話のメーカー上位3企業(2022年)】

出所:モバイル社会研究所 モバイル社会白書 2022年版

日本は、新しい市場に乗り遅れただけではありません。それまで得意としていたAV機器における売り上げも大きく失ってしまいました。タブレットやスマートフォンは多機能で、テレビなどが担っていた機能の多くが搭載されています。そのため、従来のAV機器はタブレットなどに取って代わられるようになり、市場そのものが小さくなってしまったのです。

これらが原因で日本の電機メーカーは苦戦するようになり、ディスプレー部門の撤退や再編が相次ぎました。