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昨年話題を集めた商品の1つに「仕組み債」があります。見た目の利回りが高く人気の商品ですが、組み込まれたデリバティブ取引を巡って顧客とのトラブルが多発し、販売を中止する金融機関が相次ぎました。

実は7年前も「レセプト債」という債券でトラブルが起き、多くの投資家が損失を抱えてしまう事件が起こっています。販売を主導した「アーツ証券」には重い処分が下され、2016年2月1日に経営破綻してしまいました。

「レセプト債」問題で証券会社が破綻

レセプト債とは、診療報酬を原資とした債券のことをいいます。社債を発行して調達した資金で病院などから診療報酬債権を額面より安く買い取り、実際に受け取る診療報酬を基に利息や元本を支払うという仕組みです。

しかしアーツ証券が販売していたレセプト債は、買い取った診療報酬を大きく上回る額が発行されていました。つまり裏付けのないまま債券が発行され、多くの投資家に販売されたのです。レセプト債を発行していた3社の発行残高は227億円に上り、約2470人の投資家の手に渡っていました(2015年10月末時点)。

さらに当該レセプト債の発行会社は、調達した資金を別の目的に流用していました。従って現金や預金も発行会社にはほとんど残らず、本来は投資家に支払われるべき資産の大部分が失われることになります。

【アーツ証券が販売したレセプト債の実態(2015年10月末時点)】

証券取引等監視委員会「アーツ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」参考資料より著者作成

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アーツ証券が悪質だったのは、実態を知りながら販売を継続した点です。アーツ証券の社長は、遅くとも2013年10月ごろまでに発行会社らから相談を受けるなどし、上記の事実を把握します。しかし、アーツ証券は顧客に安全性が高いと虚偽の説明を行い、レセプト債の販売を続けました。

事態を重く見た証券取引等監視委員会は2016年1月29日、アーツ証券に対して処分を行うよう勧告し、同社には登録取り消しという重い行政処分が下されます。アーツ証券は証券会社として営業できなくなり、同年2月1日に破産となりました。東京商工リサーチによると、同社に対する個人債権者は447人に上り、中には2億9000万円に達する人もいたようです。