これも産業廃棄物?「おから裁判」とは

そもそも産業廃棄物とは、廃棄物処理法で定義された20種類の廃棄物のことで、事業活動を通じて排出されるものをいいます。食品については、固形物は「動植物性残さ」、液状のものは「廃酸」や「廃アルカリ」などに該当する可能性があり、産業廃棄物に類する場合は適切に処分しなければいけません。

出所:日本産業廃棄物処理振興センター 産業廃棄物と一般廃棄物

しかし、中には産業廃棄物に該当するか悩ましいものもあります。「おから」が代表的で、豆腐を作る際の副産物として知られる食品です。確かに豆腐の製造過程で生まれるものですが、広く食べられている食品であり、産業廃棄物という扱いには違和感を覚えるかもしれません。

1999年には、おからが産業廃棄物に含まれるか最高裁で争われる事態に発展しました。お金を取っておからを集めていた事業者が、その処理能力を超えて大量に集めたため、おからが腐敗し異臭を放ったことで近隣に訴えられたものです。この事業者は、産業廃棄物を処理する許可を得ていませんでしたが、おからは産業廃棄物にあたらないと主張していました。

最高裁は、おからを産業廃棄物と判断しました。ただし、この判決は全てのおからに及ぶものではありません。裁判所は、訴えられた事業者が当該おからを集める際に処理料金としてお金を徴収していたことなどを総合的に判断し、産業廃棄物として認める判断を下しています。

つまり、この事件で争われたおからについては産業廃棄物と見なされましたが、他のケースでは産業廃棄物に該当しない可能性があるということです。例えばおからを商品として仕入れてその対価も支払い、適切な量を販売するケースなら、裁判で争われた状況とは合致しません。有名な「おから裁判」ですが、全てのおからが産業廃棄物に該当するわけではないという点については覚えておきましょう。