・名門「不二家」が前代未聞の不祥事…“期限切れ”隠蔽工作で全店休業

知らないうちに自分の土地が売却されている……。一見理解できないような事態ですが、実際にそのような詐欺を働く「地面師」と呼ばれる者がいます。2017年に積水ハウスがだまされたことでも話題を集めました。

積水ハウスをだました犯人は、4年前の1月11日、フィリピンから強制送還されたところを逮捕されます。

一流ハウスメーカーから55億円を奪い取った「地面師」の手口

地面師とは、土地取引に絡んで金銭をだまし取る詐欺師のことです。土地の所有者などをかたり、不動産取引の相手方になりすますことで、取引金額をだまし取るものが主な手口です。役を演じる複数の人物を登場させて信用させることが多く、劇場型詐欺の1つといえるかもしれません。

積水ハウスの事件では、同社が分譲マンション用地として取得を目指していた五反田の土地建物が地面師グループに狙われました。同社に設置された調査対策委員会によると、その土地建物の所有者になりすました地面師グループは2017年3月末ごろに積水ハウスの担当部署に接触します。

その際、地面師グループはパスポートや公正証書などを用意していました。積水ハウスはこれらの資料で犯人らを本当の所有者と思い込み、翌月には売買契約を締結してしまいます。後の調査で、これらの書類は偽造されたものだったことが判明しています。

積水ハウスには売買契約の締結後、当該取引について多方からリスクを知らせる報告が届きました。しかし積水ハウスはこれらを「嫌がらせ」と断じ、むしろ取引を早く進める判断をしてしまいます。同社のリリースによると、積水ハウスは2017年6月1日までに土地の取引代金70億円のうち63億円を払い込んでしまいました。地面師グループは、接触からわずか2カ月ほどで大金をだまし取ったことになります。

積水ハウスは同月9日、不動産登記が却下されたことを受け、だまされたことに気付きます。同社は直ちに犯人グループとの間で取り決めていた留保金の相殺手続きを進めますが、被害には到底見合わず、約55億5000万円の被害が生じてしまいました。事件を受け、積水ハウスの役員は報酬の10~20%を2カ月間減じる処分が下されます。

地面師グループの主犯格とみられる男は、2018年12月に逃亡先のフィリピンで拘束されました。日本には1月に強制送還され、羽田空港で逮捕となります。男は詐欺などの疑いで立件され、2021年7月に懲役11年が確定しました。

【積水ハウスの業績】

※2023年1月期(予想)は、第3四半期時点における同社の予想

出所:積水ハウス 決算短信より

【積水ハウスの株価】

Investing.comより著者作成

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