リニア開業は2027年に間に合うのか

談合事件がありながらも、リニア中央新幹線は2027年の開業を目指し、東京・名古屋間の工事を進めています。しかし、その進捗は順調とはいえません。2013年9月、工事の影響で静岡県を通る「大井川」が毎秒2トン減水する可能性が指摘され、着工が見送られているのです。

大井川は静岡県の重要な水資源で、上下水道のほか、農業用水、工業用水など幅広く用いられてきました。静岡県によると、毎秒2トン分もの水は約60万人の生活用水に相当します。静岡県にとって、大井川の減水問題は受け入れられるものではありませんでした。

国は2021年12月まで水資源に関する有識者会議を13回開き、中間報告書を公表します。またJR東海も「大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取り組み」を公表し、静岡県の理解を得ようとしました。しかし静岡県は2022年1月、「南アルプストンネル工事を認めることの状況にない」との認識を国とJR東海に伝えるなど、両陣営の隔たりは埋まっていません。

有識者会議はテーマを環境保全に切り替え、2022年6月から再び議論を開始しました。とはいえ、静岡県と和解できるかは不透明です。2027年の開業を絶望視する声も少なくありません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。