充実した老後を送るために、資産運用などによって「資産寿命」を延ばすことも大切ですが、日常生活を制限なく送れる「健康寿命」も同様に重要です。

医師の鎌田 實氏は、介護保険のお世話にならず、何歳になっても自分の足で行きたいところへ行ける元気な体を手に入れるには、筋トレをはじめとする運動で筋肉を増やす“貯筋”が必須と言います。著書『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』ではご自身も実践し、運動が苦手な人でも続けやすい20のズボラ筋トレを紹介しています。

今回はそんな『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』より、貯筋の重要性について解説する第2章を特別に公開します(全4回)。

※本稿は鎌田 實『疲れない 太らない ボケない 60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

コロナ太り解消に食事だけのダイエットは危険!

新型コロナウイルスの感染予防のため、私たちは2020年の3月頃から、長期にわたる外出自粛の要請で、ステイホーム、いわゆる「巣ごもり生活」の時間が増えてきました。そのことにより、中高年の健康に大きな影響が出始めています。

こんなサインが出てきます。ひさしぶりに外出したら、「歩くのが遅くなった」とか「歩くとすぐに疲れてしまう」と感じたことはありませんか?

あるいは、巣ごもり生活を続けていたら、体重が増加したり、血圧や血糖値が上がった人はいないでしょうか?

巣ごもり生活を続けていると、日常生活で体を動かすことが少なくなり、いわゆる運動不足の状態になります。さらに、外出を避けることで、運動不足に拍車がかかり、足腰の筋肉が少しずつ衰えていきます。そして、以前のように速く歩けなくなったり、歩くとすぐ疲れるようになってくるのです。

また、運動不足は肥満につながります。肥満は血圧や血糖値が上昇するメタボリック症候群(メタボ)を引き起こすため、血圧や血糖値、コレステロール値などの数値がコントロールしにくくなってきます。

体重が増えてメタボが気になると、食事を減らしてダイエットしようとする人が多いのではないでしょうか。しかし、これではますます筋肉は衰えます。

アメリカのベイラー医科大学の論文によると、肥満高齢者に対して、食事による減量プログラムを行うと、むしろ筋肉量や骨量の低下を加速させて、結果としてサルコペニア(加齢性筋肉減少症)や骨粗鬆症を生じさせると指摘しています。

ではどうすればよいのでしょうか。同論文では、筋力トレーニング+有酸素運動(ウォーキングや水泳などの酸素をとりいれて行う運動)であると述べています。

メタボ健診が導入されてから十数年たちますが、今の日本ではメタボが健康を害する原因のワースト1といわれています。

ところが、50歳代でメタボ対策として食事だけのダイエットを始めると、筋肉量が減少するため、70歳以降にサルコペニアや骨粗鬆症、さらにはフレイル(虚弱)になって、介護保険のお世話になる確率を高めてしまうということを、僕は講演などで話してきました。