石油元売り大手の経営戦略が注目されている。資源高などの影響で、2022年3月期の決算は各社とも過去最高益を記録した。一方で、世界的に脱炭素化の動きが急激に進んでおり、二酸化炭素(CO₂)を排出する側としての立ち位置にある石油元売り各社は、脱炭素化社会に向けて独自の戦略を打ち立て、カーボンニュートラルという難題に立ち向かっている。

22年3月期決算は最高益を記録も、資源高の特殊要因

まず国内で石油元売り大手と呼ばれるのは、ENEOSホールディングス(HD)、出光興産、コスモエネルギーホールディングス(HD)の3社だ。2016年には、出光興産がロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェルの株式取得を完了、2017年にはENEOSHD(当時JXホールディングス)が東燃ゼネラル石油を完全子会社化したことにより、現在の3社になった。

足元では、22年3月期の各社の最終利益(親会社の所有者に帰属する当期利益)は過去最高を更新。ENEOSHDが前年同期比約4.7倍の5371億円、出光興産は同約8倍の2795億円、コスモエネルギーHDは同61.7%増の1389億円だった。各社とも、急激な資源価格高騰に伴い原油調達から製品販売までの「タイムラグ影響」が増益の主因の一つとしている。

一方で、2023年3月期の見通しは各社とも減益を予想。ENEOSHDが前期比約68.3%減の1700億円、出光興産は同41.0%減の1650億円、コスモエネルギーHDは同33.0%減の930億円と見通す。各社とも前期の利益を押し上げたタイムラグ影響がなくなることが大きい上、ENEOSHDは21年度に売却した英国企業の利益剥落といった特別要因が影響する。

ロシアによるウクライナ侵攻などで世界的なエネルギー危機が叫ばれる中、各社とも大前提にあるのはエネルギーの安定供給だ。ただ、同時に環境に配慮したカーボンニュートラルという難題に取り組まなければならない。カーボンニュートラルに向けた各社の取り組みを直近の説明資料などを基に一部を解説していく。