投信業界のキーパーソンにロングインタビューする投信人物伝。シリーズ第4回は農林中央金庫グループで投資運用・助言を手掛ける「農林中金バリューインベストメンツ」の常務取締役CIO(最高投資責任者)の奥野一成氏に話を伺いました。奥野氏は投資信託「おおぶねシリーズ」など著名ファンドを運用。厳しい選定基準から選んだ「構造的に強靭な企業」を投資対象とし、あの投資の神様と称されるウォーレン・バフェット氏にも通ずる長期厳選投資が特徴です。奥野氏のキャリアやファンドの立ち上げ、おおぶねの運用などについて振り返りながら、その投資哲学に迫ります。

コンサルを志すきっかけとなった大前研一氏の書籍との出会い

なぜ、ファンドマネジャーという仕事を選んだのか。この話をすると少し長くなってしまうのですが、私が子供だった時まで遡ります。

子供の頃、英雄伝の本をたくさん読みました。普通、この手の本を読むと、主人公である英雄に憧れたりするものですが、私はちょっと変わっていて、その英雄を支える軍師に興味を持ちました。豊臣秀吉にとっての竹中半兵衛、劉備玄徳にとっての諸葛亮孔明のような人物になりたいと思ったのです。中高校生の頃には、中国春秋時代の軍事思想家である孫武が書いたとされている「孫子」等の兵法書を読みあさりました。

キャリアの原点となるさまざまな出会いについて振り返る奥野氏

そんな子供が大学生になった時、当時、マッキンゼーの日本支社長をされていた大前研一さんの本に出会います。「企業参謀~戦略的思考とはなにか」がそれです。初版は1975年なので、もう50年近くも前に書かれた本ですが、今読んでも非常に参考になります。

特に印象的だったのが床屋さんの話です。

当時、街中にあった床屋さんの料金は3500円だったと記憶しているのですが、この価格がどのようにして決まっているのかを、たとえばカットがいくらで、肩もみがいくら、シャンプーがいくら、というように要素分解して、たとえばカットだけなら1000円でサービスを提供できるという話をしています。今では、1000円カットの床屋さんチェーンが当たり前になっていますが、それを50年近くも前に指摘したのです。

軍師に興味を持っていた私には、まさにドンピシャの本でした。企業のビジネスを分析し、本質を見極め、具体的な戦略として提案する、まさに私が憧れた軍師そのものだと思いました。この本との出会いを機に、企業経営者にとっての軍師的な存在であるコンサルタントになろうと決めたのです。