加入者のための教育、それは事業主に課せられる法的責務

以前別のコラムで少し触れましたが、私とDCの関係は、以前在籍していた運営管理機関である某大手保険会社時代から今に至ります。その経験から、私は企業(事業主)・従業員(加入者)双方から見えるDC運用の実態と課題を、現場を通じて間近に見てきました。今回のコラムでは、日頃から私が密に接している企業型DCから見える運用の実情を通じてお話します。

自社の年金制度としてDCを導入している事業主には、税制メリットの恩恵があるだけでなく、所属する加入者全員に対して提供しなければならないことがあります。それが加入者への投資教育の実施です。

本来DCは、自分の年金づくりを加入者自身で行う制度ですが、企業型DCは事業主が全加入者に対して一人ひとりが適切な運用を行えるよう定期的なサポートを行う必要があります。

一般的に企業がDCを導入する場合、それは福利厚生の一環として従業員へ提供されています。福利厚生とは「給与・賞与以外の報酬、サービス」と位置づけられており、従業員が健康で安定した生活を送れること、従業員が働きやすい環境を整備するという目的がありますので、福利厚生という点から見ても、事業主は加入者に対して、平等かつ適切な教育を提供する必要があり、DC担当者は、加入者の皆さんの定年後の人生が豊かになるよう、日々試行錯誤されています。   

企業が従業員へ提供する投資教育の種類と目的

まず、企業型DCを導入する事業主は、法的責務として従業員である加入者の皆さんに対して実施すべき教育が2つあります。「導入時(加入時)教育」と「継続投資教育」です。あなたが企業型DCを導入している企業に入社(新卒・転職等問わず)した時、企業があなたに対して最初に実施する教育が「導入時教育」、その後事業主がDC制度運用にあたり独自に定めたプログラムに則り、あなたを含めすでに在籍する他の加入者全員を対象として定期的に実施するのが「継続投資教育」です。

この導入時教育と継続投資教育でどんな教育が行われるかというと、導入時教育は『DC制度における運用の指図の意味を理解すること、具体的な資産の配分が自らできること及び運用による収益状況の把握ができること』を主たる目的として実施する教育です。

簡単に言うと、この教育の受講者は運用に初めて取り組む人が対象と位置づけられており、制度の概要や目的、運用に必要な行動を自分で行えるようになることを理解・行動・把握できるようになることをゴールとしており、運用にあたり知っておくべき必要最低限の情報が提供されます。

継続投資教育は、加入者が導入時教育を通じて得た知識と理解をさらに深めてもらうことを主たる目的として実施する教育で、その内容も導入時教育と比べると、運用に関係する全ての要素に対して、より踏み込んだ内容となっています。

また、この継続投資教育には、一度きりの導入時教育で習得したことを100%理解できていない人や、受講はしたが運用に興味が沸かず消極的な加入者への再教育・行動促進の場として活用するケースも非常に多く、この継続投資教育受講に臨む意識の違いで、同じ加入者同士でも運用において色々な差が生じてくるのが一般的です。